ココ・シャネル COCO CHANEL
ポイント ★★*
DATE 09/8/8
THEATER CCKW
監督 クリスチャン・デュゲイ
ナンバー 188
出演 シャーリー・マクレーン/バーボラ・ボブローヴァ/マルコム・マクダウェル/オリヴァー・シトリュック
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
コルセットからの解放、それが彼女が目指した女の装いだ。男社会の添え物として派手に着飾ることを義務付けられた上流階級の女たちが戦争の勃発とともに自らの手を汚して働かなければならなくなったとき、ヒロインは丈夫な生地で動きやすくなおかつオシャレ心を満たす服を作る。古臭いしきたりがしみついた男のデザイナーが考えたお仕着せの流行ではなく、女が女のために考案した実用性とファッション性を兼ね備えた仕事着。映画は女性の社会進出の時流を鋭く捕らえた先見性と、「カワイイ」という概念を初めて生みだした彼女の波乱の生涯を描く。
孤児院で育てられたガブリエルはお針子の職を得て働き始める。客として店に来たエチエンヌという軍人に見染められるが愛人の立場が我慢できず、エチエンヌの親友の実業家・ボーイの支援で帽子店を始める。
ガブリエルは女が自立する道を早くから模索していたのだろう、まだ女は横座りで乗馬していた時代、ズボンをはいて馬にまたがって狩りに参加するシーンが彼女の意志の強さと進取の気性を象徴する。さらにこじゃれた麦わら帽をパリでヒットさせ、「女は男のためではなく自分たちのために装う」という言葉通り、男の目よりも女に支持される服を作り続ける。そんな中でのボーイとの別れは、愛よりも仕事に生きプライドを優先させる彼女
の壮絶な決意だ。
物語は老境に達したシャネルが15年ぶりの復活コレクションに失敗し、自らの生涯を振り返るという構成をとる。ところかまわずタバコをふかし、側近の進言にも耳を貸さず女帝のようにふるまうシャネルをシャーリー・マクレーンが好演。政治家やアーティスト、女優など世界中のセレブに愛用された彼女のデザイン、それは現代でもワーキングウーマンの憧れとなっている。しかし、仕事も結婚も家庭もと欲張りな21世紀の女にとって、彼女の生き方は、「かっこいいけれど見習いたくはない」モノに映るだろう。もう少し彼女の行動や感情に何らかの共感できる部分を描きこんでほしかった。