キャデラック・レコード Cadillac Records
ポイント ★★
DATE 09/8/16
THEATER CCKW
監督 ダーネル・マーティン
ナンバー 192
出演 エイドリアン・ブロディ/ジェフリー・ライト/ビヨンセ・ノウルズ/ガブリエル・ユニオン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
第二次世界大戦直後、まだロックン・ロールが生まれる前の米国音楽界に、夢見る若者たちが南部の黒人音楽で一大ムーブメントを起こす。それは黒人に対する差別意識のない東欧からの移民が黒人たちの中からダイヤの原石ともいえる才能を発掘し、育て上げた物語。実話に基づき、実在した人物のエピソードを忠実に再現しているのだろう、しかしそのエピソードはただ歴史の表層をなぞっているだけのような薄っぺらさで、登場人物の喜怒哀楽や創作の苦悩、愛と死、友情と裏切りといった人間的な感情が単発的にしか描かれず、焦点のぼけた作品になってしまった。
ポーランド移民のレナードはシカゴでナイトクラブを開く。レナードは南部からやってきたマディと知り合い、マディがギターを弾きながら歌うブルースを録音、ラジオ局に売り込む。レコードは大ヒット、レナードとマディはひと財産を築く。
ラジオのDJがくわえタバコのままマイクに向かってしゃべったり、ミュージシャンがところ構わず平気でタバコを吸っている。まだ、健康意識が低く、タバコの害などまったく問題にされなかった世の中とはいえ、見ているだけで気分が悪くなる映像だ。そのあたり、タバコが嗜好品として高い地位を得ていた当時の雰囲気がよく伝わってくる。
さらに時代は下り、チャック・ベリーやエタ・ジェームスといった歌手も登場し、マディに影響を受けた若き日のローリング・ストーンズまで顔を見せる。だが、映画は彼らの歌声をじっくりと聴かすというサービスはせず、レナードを中心とする人々の酒と女とドラッグにおぼれる日々ばかりを描写する。おそらく次々と新しいものを作り出さなければならないプレッシャーから逃れるためなのだろうが、ならばトップアーティストとして第一線で活躍し続けるにはどんな苦労や葛藤があったのかを具体的に語るべきだ。もっと、音楽に人生をかけた男たちの熱い思いが伝わってくる物語を見たかった。