こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ファイナル・デッドサーキット 3D

otello2009-10-02

ファイナル・デッドサーキット 3D FINAL DESTINATION

ポイント ★★★
監督 デヴィッド・リチャード・エリス
ナンバー 231
出演 クリスタ・アレン/リチャード・T・ジョーンズ/ニック・ザーノ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


釘、タイヤ、木切れ、鉄板、小石etc.スクリーンから猛スピードで弾けだす飛翔物は無意識に身をかがめてよけてしまうほど。カーレース場での大惨事から日常生活に潜んでいる何気ない違和感まで、ディテールにこだわった死神の悪意はあらゆる場所に宿り、モノに働きかけていく。ねじの緩みやオイル漏れ、不安定なレバーなど、小物を動かしてじわじわと登場人物に危険が迫っていることを予告し、予想通りに死ぬこともあれば意表をついた絶命もある。血しぶきと肉片・内蔵が飛び散る場面は悪趣味極まりないが、その3D映画の特性を生かした立体感からあふれるリアリティは、次の犠牲者の最期が楽しみになってくる。


サーキットで友人たちとレースを観戦していたニックは、大クラッシュを予知し避難する。はたして数十人が犠牲となる大事故が起きるが、その後ニックと共に避難した男女が次々と不審死を遂げる。


生き残った者のほとんどは、サーキットであっさり逝った方が良かったのではと思わせるほど苦痛に満ちた死を迎える。火だるまになったり排水口に引きこまれたり。特に自動車修理工はボンベに胸を押しつぶされ、菱形のフェンスの網目形に体に穴が開く芸の細かさ。さらにニックの恋人・ローリーがエスカレーターの歯車に巻き込まれてミンチにされてしまう目をそむけたくなるシーンは、骨が砕かれる痛みが伝わってくるような臨場感だ。


最初に主人公が見た白日夢の順番通り生存者が非業の最期を遂げていくのは、このシリーズのお約束。クライマックスともいえるシネコンの大火災はちょうどローリーが親友と3D映画を見ている設定で、彼女たちが見ている映画の爆発シーンの炎が本物の火事の炎となってスクリーンから飛び出す凝った仕掛けには、この作品も3Dで見ることを勧めているのか、思わず吹き出してしまった。それらの残酷でグロテスクな描写の中にも視覚的な小技が満載されていて、小さなツッコミどころよりも「次はどんなショッキングな映像で驚かせてくれるのだろうか」という期待に満ちた稀有なホラー映画だった。


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