こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

きみがぼくを見つけた日

otello2009-10-27

きみがぼくを見つけた日 THE TIME TRAVELER'S WIFE

ポイント ★*
監督 ロベルト・シュヴェンケ
ナンバー 253
出演 レイチェル・マクアダムス/エリック・バナ/アーリス・ハワード/ロン・リヴィングストン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


過去と未来、時を行き来できるにもかかわらず、定められた運命を変えることはできない。ただ、愛する女の心を少しずつ己に向けさせる以外には。そんな、自分では制御できない能力を持ってしまった男が、苦悩の果てに本当の幸せをつかんでいく。主人公にとって時間とは何なのか、現在とはいつなのか、映画は全く説明せずランダムにタイムトラベルする彼に振り回される。過去に戻って他人だけではなくその当時の自分に未来を教え、未来に行って自分が死んだ後の世界で成長した娘に会うという、もはやなんでもありの混沌。そんな状況ででいくら愛の大切さを説かれても共感できない。


図書館司書のヘンリーの前にクレアという若い女が現れ、ずっと出会うのを楽しみにしていたと言う。クレアは6歳の時に突然目の前に現れたヘンリーをずっと結婚相手として心待ちにしていたのだ。やがて2人は結婚式を挙げるが、式の途中でヘンリーは姿を消してしまう。


いきなり幼いヘンリーの前に大人のヘンリーが現れて忠告する。この作品のようなラブロマンスにタイムパラドックスを指摘するのは野暮なのだが、未来の自分に会った少年の未来はいったいどうなるのだろう。一方でクレアの現在の記憶も一貫していない。ヘンリーが過去にタイムトラベルするたびに、関わった人たちの記憶が少しずつ書き換えられ、何が真実なのかがまったくわからず不安定な気分にさせられる。ベースとなる時間軸を明確に定義しなかったのがこの作品の最大の欠点だ。


しかも、避妊手術をしたヘンリーに怒ったクレアの前に若いころのヘンリーが登場してクレアとセックスし、ヘンリーの子を身ごもるという、恐るべきご都合主義。そのことは避妊手術後のヘンリーの記憶になはない。ここまでくると、娘というかけがえのない存在を登場させて親子の情愛に訴えようとする展開もあざとい仕掛けにしか映らない。唯一、生前の母に愛する気持ちを伝えるシーンだけが、親孝行は親が生きているうちにしろという教訓にはなったが。。。