こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マイケル・ジャクソン THIS IS IT

otello2009-11-13

マイケル・ジャクソン THIS IS IT

ポイント ★★*
監督 ケニー・オルテガ
ナンバー 267
出演 マイケル・ジャクソン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


世界中からオーディションに集まってきたダンサーたちはみな、例外なく幼少時からマイケルに憧れ、神のように崇め、彼のように踊りたいと願う。そして同じ舞台に立つことを夢に見ている。人生に意味を見出すとしたら、「This is it.」と言い切る若いダンサーの言葉が印象的だ。まさに生涯をかけて追いかけてきた目標、それほどまでにマイケルは偉大で、かけがえなく、その革命的な歌と振り付けの総合芸術は多くの人々にとってはまさに「運命」なのだ。死の直前のロンドン公演のオーディションからリハーサル風景を通じて、マイケルのステージがいかに完璧なエンタテインメントを目指していたかを再現する。


2009年春、ロンドン公演のために集まったダンサーとスタッフ。新たな歌と振り付け、そしてアッと驚くようなステージの仕掛けが次々と具体化され、マイケルが的確な指示を出していく。


肉体美を誇るように露出の多いウェアでレッスンに励む若いダンサーたちに混じって、マイケルは手と顔以外の肌を一切露出しない。それは50歳という年齢からくる衰えを隠しているからなのだろうか。それでも、膝や足首を柔軟に操りベルトコンベアーに乗っているように滑らかに床を横に移動するテクニックは健在だ。ダンスだけでなくミュージシャンに対する指示も「ベッドから這い出るようにゆっくりと」とか「月光に浸るような余韻」という風に具体的で視覚的。音楽とヴィジュアルを融合させた先駆者らしい一面をみる思いだ。


やがて、振り付けや歌、ステージの構成も徐々に固まり、本番さながらのリハーサルが繰り返される。ダンスと音楽だけではなく、視覚的サプライズが随所に仕掛けられた、まるでテーマパークのような演出には思わず現実を忘れて見入ってしまいそうになる。常に常識を打ち破り、変化を続け、観客を驚かせ昂奮させ感動させることだけを考えている。本物のエンタテイナーの真髄に触れた気分になれた。