こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

天使の恋

otello2009-11-14

天使の恋

ポイント ★★
監督 寒竹ゆり
ナンバー 269
出演 佐々木希/谷原章介/山本ひかる/大石参月/七菜香/加賀美早紀
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「売春」「難病」「真実の恋」というケータイ小説の三題噺をベースに、トラウマといじめ、自殺、レイプなど、陳腐な要素がてんこ盛りにされた物語は、もしかしてコメディなのか。容姿に恵まれた故にいつも友人たちの中心にいる女子高生が、積極的に体を売りカネを稼ぐ。さらに友人たちとも共謀し恐喝にまで手を染める。その手口はやくざ顔負けの狡猾さで、前半のヒロインの言動には嫌悪感しか覚えない。映画は、そんな彼女が「運命的な出会い」と思い込んでいる男と交際する過程で、他人を愛することは自分を大切にすることであると学んでいく。


17歳の理央は級友とつるんで援交サークルを作り万札におぼれる日々。ある日、DPE店の手違いで受け取った写真に写った男に直感が閃き、会いに行く。光輝というその男はどこか厭世的で無愛想な中年の大学講師だったが、理央は彼に惹かれていく。


恋に落ちた理央は、光輝の迷惑を顧みずにジコチューな振る舞いで愛を押しつけるずうずうしさ。しかも己のしぐさがカワイイと確信している。そのあたり理央の若さゆえの無敵さが、もはや勘違いの域に達していて思わず失笑を漏らしてしまう。陰湿な売春婦から天真爛漫な乙女に変身する理央、簡単に過去をなかったことにする女のずるさを佐々木希がわかりやすく演じている。


やがて、光輝は理央が組織的な売春を仕切っていたとも知らずに、彼女に心を開いていく。一方で脳腫瘍の悪化で記憶障害が出始め、突然理央の前から姿を消す。そこからはなぜか理央が悲劇のヒロイン扱い。春を鬻ぎ、無垢な友人を巻き込んだ上、別の友人を自殺に追い込んだ理央のような女が、純粋に人を好きになったからといって、それがすべての悪行を洗い流す免罪符になるとでも思っているのだろうか、この作品の作者は。やはり理央にはきちんと罪の総括をさせ、苦悩や絶望といった人生の困難をきちんと学ばせるべきだった。まあ、理央も光輝も死ななかったのは、この安っぽい映画を見た観客にとっては不幸中の幸いだったが。。。