こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

2012

otello2009-11-23

2012


ポイント ★★★
監督 ローランド・エメリッヒ
ナンバー 276
出演 ジョン・キューザック/キウェテル・イジョフォー/タンディ・ニュートン/ダニー・グローヴァー/アマンダ・ピート
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


猛スピードで追ってくる地割れと陥没をリムジンで逃げ切り、降り注ぐ火山弾や崩落するビルの谷間を飛行機をでかいくぐる。主人公に迫りくる危機また危機を、圧倒的な情報量と重低音のサウンドで再現し、そのスリルと興奮はまさにテーマパークの体験型アトラクションに乗っているようなアドレナリンの大量分泌を促す。人間的なドラマなどこの作品には付け足しに過ぎず、大規模な地震津波・溶岩噴出など地球の崩壊を目の当たりにしなんとかサバイバルしようとする男の体感を、ひたすら観客にも味あわせようというサービス精神の詰まった映像は、むしろ爽快なカタルシスさえ覚える。映画は見世物と割り切り、脳幹を刺激することだけに徹した作り手の姿勢は心地よい。


太陽フレアの活性化でニュートリノが増大し、地球内部の温度が急上昇、世界各地で天変地異が起きる。地質学者のエイドリアンは地表が水没すると予測、先進国は現代版「ノアの方舟」を密かに建造する。異変にいち早く気づいた作家のジャクソンは家族とともに方舟が隠されているチベット山中を目指す。


大自然の破壊力に長年築き上げた文明がいとも簡単に形を失い、限られたセレブだけが助かる手段を持つ。ほとんどの者はなす術もなく犠牲になり、人間の存在などいかにちっぽけなものであるかを思い知らせてくれる。特に米国の「砲艦外交」の現代におけるシンボルである空母津波の波濤から真ッさかさまにホワイトハウスに落下していくシーンは、軍事力を背景に地球を牛耳ろうとする米国への神の鉄槌のようで、大統領が運命を受け入れる場面は人智の限界を示しているようだ。


本来、方舟に乗る権利を持たないジャクソンは、なんとか家族だけは守ろうと、何度も死の淵より生還する。あきらめて愛するものと一緒に最期の時を迎えようという考えはない。それは、ノアという彼の息子の名が示すとおり、ノアこそが方舟で生き延び新世代の人類のリーダーとなる宿命を背負っているからで、ジャクソンは何としてもノアを生かさなければならない。彼の活躍と強運が神がかり的なのは、「選ばれし者」だったからなのだ。。。