こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

宇宙戦艦ヤマト 復活篇

otello2009-12-14

宇宙戦艦ヤマト 復活篇

ポイント ★★
監督 西崎義展
ナンバー 295
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「無限に広がる大宇宙〜」のナレーションで始まる導入部に思わず懐かしさが込み上げてくる。第一作からもう30年以上の時を経たが、物語の設定も20年の時が下る。その間、宇宙物理学も発展しここではマルチバースの概念が取り入れられている。ところが、相変わらずそこで描かれるのは古いタイプの悪党と戦う正義感に燃える地球人という古臭い構図。艦長に出世した主人公や部下もあくまで武力で敵を制圧することしか考えず、映画の価値観は米ソ冷戦時代から進歩していない。


銀河系中心部で発生した移動性ブラックホールが地球に迫り、人類は他惑星に移住することになる。しかし、第一次、二次移民船団は謎の艦隊に殲滅され、第三次船団の護衛のために古代進が辺境から呼び戻され再建された宇宙戦艦ヤマトと共に旅立つ。


古代には雪との間にできたミユキという娘がいるのだが、家庭を顧みなかったせいで関係はぎくしゃくしている。そんな2人が言い争いをしているときに古代が指令本部に呼び出されるが、23世紀になってもケータイを使っているのには失笑をもらした。もっと未来的な通信手段を思い浮かばなかったのだろうか。その後もみゆきの乗った輸送機が墜落し古代が救出に向かうシーンがあるが、自分の娘だけ助けると古代は他の遭難者には見向きもせずさっさとヤマトに戻るといった軍人にあるまじき行為。みゆきのキャラは古代にとって鬼門だった。


やがて使命を果たしたヤマトはなんとか地球に戻るが、いよいよブラックホールが地球を飲み込む寸前、なぜか異次元人がヤマトのモニターに現れブラックホールの種明かしをしてしまう。ここまで来るとアホ丸出しとしか言いようがなく、とても違う次元を自由に行き来できる科学力を持った生命体には見えなかった。原案・石原慎太郎と大きくクレジットされたオープニングにいやな予感がしたが、「血を流しても守らねばならないものがある」といった好戦的なセリフとともに石原の性格がよく反映されている作品だった。内容の拙速さも含めて。。。