こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

誰かが私にキスをした

otello2010-03-04

誰かが私にキスをした

ポイント ★★
監督 ハンス・カノーザ
出演 堀北真希/松山ケンイチ/手越祐也/アントン・イェルチン
ナンバー 49
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


記憶喪失をきっかけに過去を一新しようとする少女は、古いしがらみを思い出すより新たな人間関係を築いて違う自分になれるような気がしている。恋なのか憧れなのか、大人になる一歩手前の複雑な心理がリアルに描かれる。胸の内をストレートに口にするのは偽善者と思われたくないため、しかし、己の言葉が他人を傷付けることもあると知って彼女は成長していく。映画は3人の少年の間で揺れ動くヒロインの気持ちを軸に、繊細な年頃の残酷な感情を実験精神にあふれたスタイリッシュな映像で再現する。だが、エピソードがあまりにもとりとめがなく、何が言いたかったのかさっぱり理解できなかった。まあ、イマドキの高校生が考えている内容など最初からわからんが。。。


階段から落ちて頭を打ったナオミはユウジに助けられて病院に運ばれるが、最近4年の出来事を覚えていない。学校で作るイヤーブックの共同編集者ミライや、ボーイフレンドのエースが彼女の前に現れるが、みな彼女に違和感を
抱く。


本来はもっと活発で積極的だったのだろう、ところが今では少し影のあるユウジに惹かれているナオミ。それが気に食わないミライ。エースに対しては付き合っていた事実など最初からなかったように振る舞う。ユウジが好きなのか、心配してくれるミライを選ぶべきなのか、おそらくナオミ自身も本当は誰が好きで何を求めているのか分からないのだろう、そんな整理されないままの迷いがそのまま羅列されるため、見る者は混乱するばかりだ。


さらにハムレットを演じたり、ミライと喧嘩してイヤーブックの編集を下りたり、LAにいるユウジの元に1泊3日の強行軍で会いに行ったりと、彼女の行動力はとても悩みを持つ少女には見えない。その上でいつの間にかなくした記憶を取り戻していたと告白する。これはもしかして頭を強打したナオミの脳内で起きている現象なのだろうか。少なくとも不安定に落ち着かないナオミの精神状態を忠実に反映させているのは間違いない。