こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シャーロック・ホームズ

otello2010-03-15

シャーロック・ホームズ Sherlock Holmes

ポイント ★★
監督 ガイ・リッチー
出演 ロバート・ダウニーJr./ジュード・ロウ/レイチェル・マクアダムス/マーク・ストロング/ケリー・ライリー
ナンバー 62
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


クールでスタイリッシュかと思えば少し間の抜けたところがあり、鍛え上げられた筋肉と洗練された格闘術を身につけているが女の扱いには疎い。さらに抜群の記憶力と観察力で過去を見通してしまう洞察力がある割には他人の心を読めない。科学の力が神秘や魔法にとってかわった時代、論理的な思考とタフな肉体を武器に難事件を解決する主人公。ガイ・リッチーによって新たに創作されたシャーロック・ホームズ像は、さまざまな顔を持つある種のスーパーヒーロー、しかし、映画はそんなキャラクターよりも圧倒的な見せ場の波状攻撃で見る者の興味をつなぎとめる。


黒魔術を使った連続殺人の犯人・ブラックウッド卿がホームズの活躍で逮捕される。ブラックウッドは死刑を宣告されるが復活を予言、刑の執行後埋葬された墓から逃亡する。ブラックウッドは秘密結社を通じて全世界の支配を目論んでいた。


相棒のワトソンとともにブラックウッドの陰謀を暴こうとホームズは奔走する。そこにひと癖ありそうなアイリーンというクライアントが絡んで来て、3人は幾度もの危機を何とか乗り越えて真相に迫るが、その過程で醸し出される雰囲気にどうもなじめない。言葉の端々にユーモアと皮肉が巧みに混ぜ合わされているが、そのニュアンスが映像から伝わってこないのだ。結果的に、ホームズにもワトソンにも、ましてやアイリーンにも感情移入することができず、見かけの派手な展開とはうらはらにただストーリーを追うだけに集中力を費やしてしまう。


やがてホームズたちはブラックウッドの国会議員皆殺し計画をキャッチ、阻止すべく彼の手下と戦い、ブラックウッドの魔術のトリックを見破る。ところが、このあたりの種明かしも、あっと驚くような仕掛けというよりは21世紀の水準からすれば手品のレベルで知的興奮はなかった。期待した以上に斬新なホームズではあったが、彼の感情にも行動にもいまひとつ共感を覚えなかった。