ポイント ★★★*
監督 古厩智之
出演 成海璃子/北乃きい/石黒英雄/荒井萌/山下リオ/高木古都
ナンバー 75
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
制服のスカートを短くたくし上げた紺ハイソの女子高生ふたりが一心に竹刀を振る。ピンと背筋を伸ばして対峙し、射るようなまなざしで間合いを測り、渾身の一撃を繰り出す。成海璃子と北野きいの決闘は、今風の見かけと古風な魂の美しくも奇妙なミスマッチが絵になっていて、剣道に打ち込むピュアな青春を凝縮した非常にヴィジュアル的に素晴らしいシーンだ。映画は女子高の剣道部でお互い切磋琢磨するふたりのヒロインを通じて、勝利という目標に向かって努力する姿と、それ以上に仲間や友情の大切さを描く。より上を目指すにはライバルと親友が必要なのだ。
剣道中学チャンピオンの香織は中学時代に唯一負けた早苗を追って、早苗と同じ高校に進学、剣道部に入部する。しかし、早苗は逃げ回るばかりのへなちょこ剣道、幻滅した香織は早苗を自宅の道場に連れ込んで連日猛特訓する。
いつも真剣勝負、勝つことしか頭にない香織と、勝ち負けより楽しく剣道をしたい早苗。生活そのものが剣道の香織に、ケーキ食べ放題やゲーセン、プリクラといった女子高生らしい遊びを教える場面が楽しい。見たこともない世界に胸躍らせながらも、ひとときでも剣道以外に興味を持ってしまった自分に罪悪感を覚えている。そんな香織の複雑な心境、硬派なのに乙女心も少しだけ持ち合わせていてほほえましい。一方の早苗も、香織の剣道に対する姿勢に感化され、いつしか勝つことの達成感を知っていく。一見、回り道しているようで、ふたりは確実に成長している。「折れてこその心」という顧問の先生ことばが、“強いだけではだめ”というあらゆる武道に共通する精神を喝破していた。
チームはインターハイ予選を勝ち抜いたが、剣道への情熱が冷めた香織を、今度は早苗が稽古に引っ張り出そうとする。本気で戦う決意を見せるために果たし状まで用意して。このあたりからふたりの剣道に向き合う態度が逆転し、心に迷いが生じた香織を早苗が剣の道に引き戻す。己にとっていちばんだいじなものは何か、いちばんやりたかったことは何か、それを見つけるまでの少女たちの道筋は、人生のきらめきを見事に切り取っていた。