こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミレニアム2 火と戯れる女

otello2010-07-24

ミレニアム2 火と戯れる女

ポイント ★★★★
監督 ダニエル・アルフレッドソン
出演 ノオミ・ラパス/ミカエル・ニクヴィスト/レナ・エンドレ
ナンバー 177
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


小柄で華奢、まるで世界を敵に回すかのごとき憎悪をむき出しにする反面、ハッカーとしての天才的能力、何ものをも恐れぬ勇気と行動力を持つヒロインの強烈な個性はこの続編でも健在。まともに言葉を交わせないほどの他人に対する圧倒的な不信感を、なぜ彼女は抱くようになったのか。今回は偶然巻き込まれた殺人事件をきっかけに、彼女は封印されていた忌まわしい過去と巨大な秘密に対峙せざるを得ない状況に陥っていく。壮大な仕掛けと張り巡らされた伏線、よりミステリー色を前面に出し、ダークサイドに堕ちた人間の魂の奥をのぞきこむような映像と意表を突く展開の連続は一瞬たりともスクリーンから目を離せない。


人身売買の取材を進めていたミレニアム誌の記者2人が惨殺、直後にリスベットの後見人も射殺死体で発見され、現場でリスベットの指紋が付いた拳銃が発見される。3人の殺人容疑を掛けられたリスベットは姿を隠しつつ調査を進める一方、ミレニアム誌のミカエルもリスベットに接触を図る。


殺し屋の次の標的はリスベット。身長2メートルの屈強な肉体と痛みを感じない特異体質を武器に彼女を追う。ミカエルは買春客のリストからザラという謎の男をあぶりだし、さらに数十年前に公安警察内部に存在した特殊機関と強大な権力が背後に隠れていることに気付く。そのあたりの畳みかけるテンポと登場人物の多さにやや混乱するが、クセのある外見の俳優と丁寧な字幕が理解を補ってくれる。


◆以下 結末に触れています◆


やがてリスベットはザラの隠れ家を見つけ侵入するが大男に捕えられる。感情を見せずあらゆるパンチやキック、スタンガンさえ効かないこの大男の不気味さは数々のスパイ映画に登場する殺し屋以上。そしてリスベットとザラの関係、ミカエルが突き止めたザラの犯罪組織と汚職役人などの謎解きとともに、リスベットとミカエルの運命は収束していく。生き埋めにされたリスベットが自力で穴から這い出し、ザラに斧を振るう場面は、彼女の生への執着と憎しみすらパワーに変える生命力を感じさせた。