こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

TSUNAMI

otello2010-07-31

TSUNAMI

ポイント ★★*
監督 ユン・ジェギュン
出演 ソル・ギョング/ハ・ジウォン/パク・チュンフン/オム・ジョンファ/イ・ミンギ/カン・イェウォン
ナンバー 181
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


美しいビーチも高層ビルも大きなつり橋も、すべて覆い尽くしてしまうメガ津波に襲われたとき、人はひたすら逃げまどい助かろうとする。そんななかで自分が嫌っている人間のために、自分を嫌っている人間のために犠牲になることができるのか。遅々として関係が進まない男と女、子供の前で父親と名乗れない男とその元妻、利権を巡って対立する開発業者と地元住民、レスキュー隊員と女子大生、映画は、さまざまな人々が織りなすドラマを一気に海に飲み込ませ、非常事態に変えて彼らの人間性をむき出しにしていく。


漁師のマンシクは食堂を切り盛りするヨニに好意を寄せているが、なかなか気持ちを伝えられない。ライフガードのヒョンシクは溺れていた女子大生・ヒミを救助すると、彼女から猛アタックを受ける。一方、地質学者のキム博士は日本海で起きた地震から、巨大津波の発生を予測する。


カメラはリゾートビーチに関わる人々の日常を丹念に追うが、そこで感情を強調するあまり俳優たちの演技は誇張される。特に、ヒミに追いかけまわされ振り回されるヒョンシクのエピソードがベタな笑いに包まれていて、ふたりを待ち受ける運命を予感させるという緻密な伏線をはり、物語を盛り上げていく。


◆以下 結末に触れています◆


やがてキム博士の警告通り、その巨大で圧倒的な大自然の脅威はビルをなぎ倒し、巨大貨物船を逆立ちさせ、人間の営みを押し流す。海水が高い壁になって一気にビーチに押し寄せるCGは迫力満点で、なぜ3Dにしなかったのか不思議だ。波に飲まれる恐怖を立体的に体感させれば、ディザスタームービーの新境地を開いたに違いない。その後の、ヒョンシクが海で溺れるヒミを救助した後恋敵を生かすために自ら命綱を切ったり、水に流されたミンシクが利害の対立する老人に助けられたりと、己の命が危うい極限状態でありながら良心に従った人々の行動には胸が熱くなる。自然災害の前では、人間はいかに小さな存在であるかを描くとともに、それでも微力ながらできることをしようとする善意を描いているところなど後味が良かった。ただ、使い捨てライターの火が貨物船から漏れた可燃液に引火する場面、人の手から離れたらライターの火は消えるはずだが。。。