こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

食べて、祈って、恋をして

otello2010-09-21

食べて、祈って、恋をして EAT PRAY LOVE

ポイント ★★
監督 ライアン・マーフィー
出演 ジュリア・ロバーツ/ジェームズ・フランコ/ハビエル・バルデム/リチャード・ジェンキンズ
ナンバー 224
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


思うままに生きてきてそれなりの成果を上げているのにもかかわらず、何かが足りない。それは、社会的な成功や物質的豊かさ、そして友情や恋愛では決して解決できないもの…。精神的な充足を求めて未来を模索する女は、すべてを捨てて“自分探し”を始める。そんな、外国に飛び出したヒロインがまったく異なる価値観に触れ生き方を見直していくプロセスはありふれているが、彼女はさらに貪欲にスピリチュアルな領域にまで踏み込んでいく。ただその姿は、人生に苦悩しているというより、より強烈な刺激を求めているだけだ。未知の土地での新しい出会いの中で違う自己を発見しようとする気持ちは理解できるが、これほど簡単に過去をリセットできるものなのか。


NYのジャーナリスト・リズは離婚後若い恋人を作ったりするが、突然「無」を感じ旅に出る。まずローマで日常を楽しむ人々に共鳴、インドではヨガ道場で瞑想の日々を送る。


瞑想中、雑念にとらわれてなかなか集中できないリズ。そう、彼女の生活を脅かしていたのは、この「雑念」。職業柄さまざまな人と会い雑多な世界に触れているうちに、情報の洪水で頭の中を整理しきれなくなったのだろう。いろいろなことを知っている、しかし本当に必要な情報はどこにあるのか分からなくなってしまっているのだ。とりあえず行動に移してはみるが、いつまでたってもゴールは見えてこない。ネット社会の迷路に落ちてしまった彼女が次々と行く先を変えていくのは、時間を忘れてリンクをたどるウェブ閲覧者を彷彿させる。


◆以下 結末に触れています◆


やがてバリ島に渡ったリズはブラジル人のおっさん・フェリペと知り合う。お手軽な幸運と安易な恋、「調和を失うのもバランスのうち」というメディシンマンの言葉に象徴されるように、人は現状に甘んじず常に次の一歩を踏み出していかなければならないのはよくわかる。だが、リズのような幸せジャンキーは、さらなる「ドラマティック」を求めてまた別の男に走るに違いない。こんなアホ女に振り回される周りの人々は迷惑千万だ。。。