こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マチェーテ

otello2010-10-15

マチェーテ Machete

ポイント ★★★
監督 ロバート・ロドリゲス
出演 ダニー・トレホ/ロバート・デニーロ/リンジー・ローハン/ジェシカ・アルバ/スティーヴン・セガール
ナンバー 241
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


あばただらけの肌に鋭い眼光、口髭とロン毛という恐ろしく凶悪な面構えのダニー・トレホ、本来なら殺し屋かボディガードが似合う俳優を主役に据えた時点で、この作品は半ば成功したも同然。被弾しても動じない強靭な肉体を持ち、手にした鉈を一閃するとチンピラどもの首が3つ飛び、医療器具を武器に拳銃で武装した男たちと戦うかと思えば小腸をロープ代わりにした脱出劇を見せる。B級テイストを徹底的に追求した映像の中の主人公は圧倒的な存在感、デ・ニーロやS.セガールといった大物でさえ影が薄い。卑劣な悪党よりも凶暴な手段で怒りと憎しみが入り混じった正義を実行する彼の姿は、新たなヒーローシリーズの登場を予感させる。


メキシコの敏腕捜査官・マチェーテは上司の裏切りにあい、すべてを失う。その後テキサスの小さな町で労働者として過ごしていた彼に、移民排斥派上院議員暗殺の依頼が来る。しかし、それは支持率アップを狙った猿芝居、ハメられたマチェーテは追われる身となる。


マチェーテは自分の命を狙うものを容赦なくぶった斬る。上院議員は国境の自警団とともに越境してきたメキシコ人を狩り獲物のように射殺する。彼らの手下も街のゴロツキどもの頭に何の躊躇なく銃弾をぶち込む。そんな、大勢の人間が死に、大量の血が流れるシーンの連続なのに、決して残酷でないところが秀逸だ。ここで描かれるのはリアルな暴力ではなく、あくまで伝説の英雄が悪を誅する過程。その神がかり的な強さは、荒唐無稽なほど伝説にふさわしいのだ。


◆以下 結末に触れています◆


やがてメキシコ人支援組織と米国人自警団の全面戦争が始まり、銃弾飛び交う修羅場となる。そこでもバイクを効果的に使ってアクションにアクセントをつける。最終的には仇敵である麻薬王との、鉈対日本刀の一騎打ち。最近動きがめっきり鈍くなったセガールも少し絞ったようで、闘っているように見える程度には体を動かしていた。全体的にオッサン俳優の使い方は素晴らしいのだが、ミシェル・ロドリゲスジェシカ・アルパといった活劇系の女優を効果的に使いこなしていなかったのが少し残念だった。