こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アメリア 永遠の翼

otello2010-11-29

アメリア 永遠の翼 Amelia

ポイント ★★
監督 ミーラー・ナーイル
出演 ヒラリー・スワンク/リチャード・ギア/ユアン・マクレガー/ミア・ワシコウスカ/ジョー・アンダーソン
ナンバー 283
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


誰も邪魔をするものがいない大空を飛ぶ。それは究極の自由、神の視点を得ること。上空からの風景は地球の雄大さが強調され、人間の営みなどあまりにもちっぽけに思えるだろう。そして前人未到の境地に挑戦し、さらなる高みに手を伸ばそうとする。映画は、航空機操縦士であり冒険家でもあった女性の半生を通じて、夢を追い続ける姿がいかに他人にも夢を与えているかを描く。しかし、ヒロインの人物像に深みがなく平板な印象。パイロットの興奮や緊張、私生活面での愛や苦悩などの人間的な魅力に乏しく、せっかくのハード面でのディテールが生かされていなかった。


女性初の飛行機での大西洋横断を成し遂げたアメリアはPRマンのジョージと結婚、彼に支えられながらパイロットのキャリアを磨いていく。折しも世界恐慌の最中、アメリアは米国のアイコンとして持ち上げられ、資金を得た後、世界一周の飛行に飛び立つ。


GPSも自動操縦もなかった時代、操縦士は飛行中はまったく気が抜けなかったはず。そのためには強靭な体力と精神力が必要とされるのに、トレーニングをする場面は省かれる。男でも厳しい長時間飛行を彼女はいかにして成就したのか、また栄養補給や排せつなどどのようにしたのか、そのあたりの女ならではの苦労話も省略されている。途中、愛人との三角関係などを絡ませるが、それもアメリアの生き方に影響を与えているわけでもない。常に冷静で平常心を保つというのが優秀なパイロットの条件なのだろうが、だからこそ困難を克服していく彼女の内面を知りたかった。


◆以下 結末に触れています◆


やがてアメリアは太平洋上で陸地を見失ってしまう。どこまでも視界に広がる大海原、ほとんどなくなった燃料、補給船との交信も途絶えがち。そういった状況の中で、焦燥・恐怖・希望そして絶望といったアメリアの心の動きが再現されていれば、もう少し彼女に感情移入できたのだが。。。