こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

恋とニュースのつくり方

otello2010-12-09

恋とニュースのつくり方 MORNING GLORY

ポイント ★★★
監督 ロジャー・ミッシェル
出演 レイチェル・マクアダムス/ハリソン・フォード/ダイアン・キートン/パトリック・ウィルソン
ナンバー 285
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


くじけない。悩まない。立ち止まらない。疲れを知らぬ馬力と失敗を恐れぬ行動力、そして絶望的な状況ですらチャンスに変えてしまうポジティブ思考。そんなヒロインの圧倒的なバイタリティの前では小さなことでクヨクヨしているのがバカバカしくなってしまう。映画はTV業界で働く彼女が24時間臨戦態勢で不人気番組を立て直そうとする姿を軽やかに描く。恋や友情よりもあくまで仕事優先、ワーカホリックなのにむしろ楽しんでいる。こういう物語が作られるのは、もしかして米国経済の復活も本モノなのだろうか。


ローカルTV局をクビになったベッキーはNYのTV局で朝の情報番組のプロデューサーに採用される。低迷する視聴率、覇気の乏しいスタッフ、テコ入れのためにベッキーは伝説の記者・マイクをメインキャスターに起用するが、古参キャスターのコリーンは面白くない…。


早朝の生放送に間に合わせるために深夜に起床し出勤、スタッフからの矢継ぎ早の提案と質問に的確な指示を与える。本番ではカメラの位置からテロップまで番組の進行を一手に任され、瞬時に判断を下す。まさにスピード命の職場で水を得た魚のようなベッキー。彼女には愚痴をこぼす友人もアイデアを相談する恋人も必要ない。もちろんイケメンの同僚とセックスはするのだが、それは愛の確認などではなくストレスの発散。途中、マイクが仕事に没頭するあまり家庭人としては失格だったとベッキーにぼやいたりもするが、それでも番組が気になって仕方がない。その一途さが回りの人間のやる気を引き出していくが、そこに悲壮感を漂わせずにコミカルに処理しているところに好感が持てた。


◆以下 結末に触れています◆


気象予報士やコリーンの体を張ったレポートなど “視聴者に媚びた”企画を、苦虫をかみつぶした顔で見る硬派のマイクという場面は、日本のワイドショーでもありがちなシチュエーション。一方でマイクが独占スクープを生中継するなど実力を見せたりもする。NYが舞台なのに奇妙な親近感を覚える作品だった。