こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キス&キル

otello2010-12-10

キス&キル Killers


ポイント ★★
監督 ロバート・ルケティック
出演 アシュトン・カッチャー/キャサリン・ハイグル/トム・セレック/キャサリン・オハラ
ナンバー 292
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


陽光あふれる地中海に保養に来たヒロインと彼女の両親。高出力のスーパーカーの助手席に美女を乗せたイケメン。親子間のコミカルなやり取りとふた昔前の007シリーズを彷彿させる主人公の登場シーンに象徴されるプロローグは軽快なテンポで展開し、直後のデートもさわやかなタッチで楽しませてくれる。ふたりは実は、失恋したばかりのキャリアウーマンと人殺しに嫌気がさした殺し屋。たちまち恋に落ち、殺し屋は己の正体を明かせぬまま彼女と結ばれる。だが、平凡な暮らしや近所付き合いに憧れていた殺し屋の日常が新鮮な一方、後半アクションが加速するとご都合主義にまみれて急速にトーンダウンする。


ニースで知り合ったジェンとスペンサーは意気投合、結婚する。しばらくはしあわせな日々が続いていたが、スペンサーは元上司の指令を断ったことから懸賞金をかけられ、組織が放った殺し屋に命を狙われる羽目になる。


スペンサーは元々正義感が強く、暗殺のターゲットも明確な“悪人”と定義される者ばかりだったのだろう。それがつい最近まで味方だった男の抹殺を命じられ実行に移した時、心の中で“何かしっくりこない”と違和感を覚えたに違いない。さらに人を殺しても何も感じなくなった自分に対する恐れが普通の生活・平和な人生を歩む決意をさせる。しかし、物語はスペンサーのそういった葛藤やトラウマを一切省き、ただ足を洗った殺し屋という描き方をするために、人物像の薄っぺらさばかりが目に付いてしまった。


◆以下 結末に触れています◆


その後、スペンサーに次々と殺し屋が襲い掛かってくる。昨日まで友人・隣人・仕事のパートナーだった者が突然ナイフを向け発砲してくるのだ。彼らはみな組織が送り込んだスリーパーでスペンサーの動きを監視していたという設定なのだが、いくらでもスペンサーを殺すチャンスがありながら、なぜか常に不自然なタイミングで牙をむくのだ。いかにキャサリン・ハイグルが「ラブコメの新女王」らしい奮闘を見せても、その説得力の無さを埋めるまでには至っていなかった。。。