こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホームカミング

otello2010-12-14

ホームカミング


ポイント ★★*
監督 飯島敏宏
出演 高田純次/高橋惠子/麗奈/秋野太作/黒部進/森次晃嗣/堀内正美/井上順/竜雷太
ナンバー 262
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


歳月と共に夢は色あせ、若者は去っていく。サラリーマン一生の目標だった一戸建て住宅、ローン返済に懸命に働いてきたのに、やっと“マイホーム”が生活の中心になると隣人の顔も知らない。そんな男の困惑や驚きがコミカルに描かれる。住人の平均年齢が70歳に手が届こうとする、かつて「ニュータウン」と呼ばれた街、気がつくと家族以外に知人がいないというご近所と無縁の彼が直面する現実がとても身につまされる。しかし、映画はそこで立ち止まろうとはせず、積極的に友人を作り行事に参加する主人公の姿を通じて、人生を謳歌するコツを教えてくれる。


大手商社を定年退職した鴇田はジョギングを始めると佐藤老人に声をかけられる。佐藤に老人仲間を紹介されるうちに町内会の集まりに出席するようになり、鴇田は地元のお祭りの実行委員になってしまう。


一方で、若い婦人警官が駐在所に赴任してきたり、幼児誘拐事件が起きたりと、鴇田の身辺はあわただしい。体力もまだ残っていて頭もボケていない、いかにもヒマを持て余した老人たちが好奇心に駆られてさまざまな出来事に首を突っ込む。鴇田たちは行方不明の子供を探すのに元住宅販売業者の老人のサークル名簿を使って住民に連絡を取るが、人間関係が希薄になっていても実は皆どこかでつながりを求めていて、そのきっかけを待っていることが浮き彫りになっていくシーンが印象的だ。そのあたりのタッチはむしろ古臭さを感じるほどだが、鴇田を演じる高田純次の飄々とした演技がうまく受け流している。


◆以下 結末に触れています◆


やがて子供たちのためではなく、自分たちのためにお祭りをやろうと言う婦人警官の一言が鴇田を変えていく。他人のためとか他人任せにするのではなく、己ののために己の時間を使い、その延長上で人の役に立っている。長い老後の過ごし方の手本を見せられているようだ。ドタバタ劇のような設定と俳優たちの大げさなリアクションはシルバー世代を意識しているのだろう。少し臭さが鼻につくが、それはあまりテンポを速くしても観客が展開についてこられないのではという配慮、あくまで気軽に楽しめる敬老映画になっていた。