こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

180° SOUTH

otello2010-12-22

180° SOUTH

ポイント ★★*
監督 クリス・マロイ
出演 イヴォン・シュイナード/ダグ・トンプキンス/ジェフ・ジョンソン/キース・マロイ/マコヘ/ティミー・オニール
ナンバー 293
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


「想定外の事が起きた時こそ冒険の始まり」。南米に今も残る手つかずの海や山を満喫するために、小さなヨットで南に向かった米国の青年の計画は突然のアクシデントで大きく狂う。だが、大海原の気まぐれな気象を相手に、人間の存在などあまりにも非力であると知っている彼は、決して先をあせらずその状況をむしろ楽しんでいるかのよう。自然を征服するのではなく、自然に生き方を合わせる。そうすることで似た考え方をする者同士が集まり、人の輪も広がっていく。そこには経済効率を追うよりも、自然と共存した方が豊かになれるという思想がはっきりと根付いている。映画は主人公の冒険を記録する旅からいつしか環境保護に軸足を移し、見る者のエコ意識を啓発する。


40年前に米国からチリのパタゴニア地方までバンで旅をした2人の若者のフィルムを見たジェフは、自分も同じ感動を味わいたいとヨットに乗り込む。途中、マストが折れラパ・ヌイ(イースター)島に寄港、修理するうちに地元サーファーと仲良くなり、彼女を旅の仲間に加える。


オーバーハングする険しい壁を登るロッククライミングから10メートルを超す大波にのまれそうになりながら水上を滑走するサーフィンまで、命がけのスリルを求めるジェフたちの姿をカメラは克明に追う。しかもジェフの旅はある意味先の読めないドキュメンタリーで、天候次第で予定は変わり撮影プランはなかなか立てられないはず。それでもカメラは一行に寄り添い、時に先回りしてレンズを向ける。山登りしているシーンなどでは明らかな作意も感じられるが、危険極まりないギリギリの現場にまでカメラを持ち込んで登場人物の表情をとらえるディレクターの執念がスクリーンからあふれ出ていた。


◆以下 結末に触れています◆


そしてジェフたちは最終目的地であるコルコバト山頂を目指す。しかし登山に適した時期は過ぎむき出しの岩肌にはハーケンがうちこめない。結局、当初の目的は果たせなかったが、その過程で環境破壊の現場を目の当たりにしたジェフは、自らの冒険心を守るにはまず自然保全が重要という答えにたどりつくのだ。このあたり、アドベンチャーエコロジーを強引に結び付けた印象が残るが、映画製作の資金を集めるためには仕方なかったのだろうか。。。