こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

デュー・デート

otello2011-01-25

デュー・デート DUE DATE

ポイント ★★
監督 トッド・フィリップス
出演 ロバート・ダウニー・Jr./ザック・ガリフィナーキス/ミシェル・モナハン/ジュリエット・ルイス/ジェイミー・フォックス
ナンバー 19
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


きちんと社会生活を送る常識人だがどこかその成功を鼻にかけ他人を見下しているビジネスマンと、非常識極まりないが根はいいヤツで他人と積極的に関わろうとする売れない俳優。本来、ファーストクラスとエコノミークラスに分かれ接点がないはずの2人が、偶然に出会ったことから始まる米国大陸横断の珍道中は災難続き。それでも自動車の中の狭い空間で長時間ふたりきりで過ごせば嫌でも距離を縮めていく。2人の間の見えない壁が低くなったり高くなったり、徐々に友情が芽生えていく様子があたたかい。


航空機を搭乗拒否されたピーターは、原因を作ったイーサンの車に乗せてもらう。財布も身分証もなくしたピーター、所持金はほとんどないイーサン、アトランタからLAまでの3200キロを2人と1匹の犬を載せた車はひたすら西を目指す。


パーマをあてた髪とひげ面、ビヤダルのような腹回り、ずけずけと人の神経を逆なでする質問、大麻吸引、そして車内でのオナニーと、イーサンの傍若無人な振る舞いはピーターにとってはまさに歩く災厄。彼の変人ぶりと彼が巻き起こすトラブルをピーターがなんとか切り抜けるようとするのだが、その過程でピーターの本性もまた赤裸々になっていく。確かに物事を遂行する能力に長けているが、自分の考え通りにならないとすぐ人のせいにして悪態をつく。一方のイーサンは、人生はなるようにしかならないとトラブルを受け入れてから対処する。しかし、そのやり取りはコミカルな処理はなされず、またリアリティに乏しい設定のせいで笑えなかった。


◆以下 結末に触れています◆


映画は、父親の遺灰、すなわち父との思い出を大切にしているイーサンと、父に棄てられたピーターの境遇を対比し、愛された記憶が人格形成に大いに影響を与えるという事実を突き付ける。そのシークエンスはピーターが妻の出産に立ち会おうとする熱意に通じている。このあたり、父に愛されなかった分家族を愛そうとするピーターの気持ちがリアルだっただけに、イーサンのもたらすトラブルが現実離れしすぎているのが残念だった。