こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

引き裂かれた女

otello2011-01-28

引き裂かれた女 LA FILLE COUPEE EN DEUX

ポイント ★★*
監督 クロード・シャブロル
出演 リュディヴィーヌ・サニエ/ブノワ・マジメル/フランソワ・ベルレアン/マチルダ・メイ
ナンバー 21
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


優しく抱いたすぐ後に冷たく突き放し、怒らせた翌日に許しを請う。人生を味わいつくした父親ほどの年齢の男の老練な恋の駆け引きは、若いヒロインをたちまち虜にする。ストレートに思いを言葉にしたあとは意外な展開が用意されていて、その落差に胸を躍らせる彼女はすっかり夢中になって、体に性のテクニックを刷り込まれていく。一方で、そんな娘を直線的に愛する若い男。映画は2人の男の間で揺れ動く女心の機微を描きつつ、愛の本質とは何かを問うていく。男も女も齢を重ねた経験値が人間の魅力と考えるフランス人の価値観では、若さより成熟のほうが美しいのだ。


作家のシャルルは気象キャスターのガブリエルに惹かれ、自著のサイン会で再会したのを機にオークションに誘う。同時に金持ちのドラ息子・ポールもガブリエルに一目ぼれし、熱心に彼女を口説く。


自分が性的に未熟なのを自覚しているガブリエルは、学識豊かで話題豊富なシャルルにどんどんのめり込んでいく。謝罪の花束に添えられたメッセージを見て目の前にポールがいるにもかかわらず迷わずシャルルの部屋に駆けつけたり、執筆中のシャルルの机の下の潜り込んだり。さらに秘密クラブでの乱交を体験するうちに、彼女はシャルルのもたらす快楽から抜け出せなくなる。その間、裕福でもガブリエルを喜ばせる術のないポールは、シャルルに悪態をつく以外に何もできない。男として歴然とした差がある2人をつうじて、経験も女心もカネでは買えないと訴える。


◆以下 結末に触れています◆


その後、シャルルがロンドンに発って落ち込んでいるガブリエルをポールは旅行に連れ出し、半ば強引に結婚の約束をする。ところが、やっと手に入れた天使なのに、ポールは彼女の積極的なセックスに見当違いの嫉妬をする。結局、2人の男と別れたガブリエルは奇術ショーの助手というまったく畑違いの方向にリセットする。ステージの上で満面の笑みを振りまく彼女を見ていると、女は過去にこだわらず今と未来を生きることに長けていると改めて思い知らされた。