こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

RED/レッド

otello2011-02-01

RED/レッド

ポイント ★★*
監督 ロベルト・シュヴェンケ
出演 ブルース・ウィリス/モーガン・フリーマン/ジョン・マルコヴィッチ/ヘレン・ミレン/メアリー=ルイーズ・パーカー
ナンバー 26
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


年金生活、老人ホーム、隠棲、ペンション経営・・・。引退して第二の人生を静かに過ごしているのに、人を殺した過去はいつまでも彼らを追いかけてくる。腕利きの工作員だったゆえに、国家が転覆しかねない事実を知っていて、露見を恐れた人間に命を狙われるのだ。映画はそんな伝説のスパイたちと現役CIA殺し屋の死闘を通じて、まだまだ元気な老人たちの活躍を描く。彼らは足を洗ったとはいえ人殺しの味が忘れられず、血なまぐさい臭いについ引き寄せられ、アドレナリンを全開にする。共に命を削るような地獄を体験してきた者同士の固い友情がうらやましい。


ひとり暮らしをしているフランクの元に攻撃部隊が差し向けられるが、フランクは一瞬で返り討ちにする。しかし、電話友だちのサラも狙われると知り、強引にサラを連れ出た上、昔の仲間に助力を求める。だが行く先々でCIAエージェントのクーパーが待ち受けていた。


深夜の住宅街で深夜に派手な銃撃戦を繰り広げたり、CIAの本部に身分を騙って潜入し極秘資料にアクセスしたりと、基本的に物語はリアリティとはほど遠い。特に旧友のひとり・マーヴィンが飛来するロケット弾に向けて銃弾を放ち敵もろとも木っ端みじんにするシーンは、まさにコミック原作ならではの展開だ。本来ならこんな荒唐無稽さを笑いとばしながら楽しむべきものなのだろうが、あまりにも正攻法で見せるためにキレキャラのマーヴィンですら真面目に見えてしまう。まあ、年寄りが年齢を省みず暴れまわる姿は退屈はしなかったが。


◆以下 結末に触れています◆


やがて、フランクらは事件の裏に隠された巨大な陰謀を暴き、反撃に転じる。そこでジジババ軍団がいかに頭脳戦で特殊部隊をせん滅するかを期待していたが、やたら小銃や機関銃を打ちまくるばかりで破壊工作のスペシャリストらしい知識や経験に基づいた奇策とは無縁。人数で圧倒的に不利なフランクたちがプロの武装集団を手玉に取るかが見どころのはずなのに、あっと驚くアイデアに乏しく、ただ銃弾と爆発物に頼るだけでは少し芸がなさすぎるのではないだろうか。さらに、彼らの歳をとったゆえの悲しみと孤独をもう少し丁寧に描いていれば、何らかの共感する部分ができたはずだ。