こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウォール・ストリート

otello2011-02-05

ウォール・ストリート WALL STREET: MONEY NEVER SLEEPS


ポイント ★★*
監督 オリヴァー・ストーン
出演 マイケル・ダグラス/シャイア・ラブーフ/ジョシュ・ブローリン/キャリー・マリガン/スーザン・サランドン/フランク・ランジェラ
ナンバー 30
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


時の流れとともに、人は変われるのか。かつて、欲望の塊だった男が、20年を経て行き過ぎた経済活動を批判的に見るようになったばかりではなく、失った家族との絆を取り戻そうとしている。「カネよりも時間がほしい」と、すっかり毒気がぬけたフツーのオッサンになってしまった主人公の姿に、彼にも愛という感情があったのかと少し幻滅した。映画は、理想に燃える若き投資家といまだウォール街を闊歩する拝金主義者たちの葛藤に親子の因縁を交え、人生において本当に大切なものは何かを問う。答えは決まっているけれど。


刑務所から出所したゲッコーは自らの体験をもとにバブル崩壊を予見した著作を上梓する。投資銀行に勤めるジェイクはゲッコーの娘・ウィニーと結婚寸前だが、ウィニーはゲッコーと絶縁状態。ゲッコーの講演でジェイクが声をかけ、2人は情報交換するようになる。


サブプライム破綻で勤務先がつぶれたジェイクは、社長を自殺に追いやったライバル銀行のブレトンに一矢報いるが、それが逆に気に入られてブレトンの下で働くようになる。カネを儲けようとする才覚とガッツがあればだれであろうと味方にしてしまう、そんな「稼ぐが勝ち」的な価値観がこの作品にも見事に投影されていた。ゲッコーを当局に売った弟子・バドとパーティで再会するシーンがあるが、ぬけぬけと笑顔で声をかける厚顔さこそがこの業界で生き残る秘訣なのだろう。人は裏切るがカネは裏切らない、カネだけが正義の世界では過去の人間関係など些細なことなのだ。


◆以下 結末に触れています◆


その後、ゲッコーはウィニーのためにスイスの銀行に隠しておいた1億ドルを持ち逃げして、ロンドンで金融界に復帰する。あれほど父親としてウィニーの情に訴えていたのに、やはり愛娘よりカネを選ぶ、これぞまさにゲッコーの真骨頂。カネの魔力に憑りつかれた人間は最後までカネを愛する最高のオチに思わず快哉を叫んだ。と、思いきや、孫ごときに目じりを下げているあのラストは何なんだ。ゲッコーには死ぬまでカネの亡者でいてほしかった。。。