こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

高校デビュー

otello2011-02-19

高校デビュー


ポイント ★★★*
監督 英勉
出演 溝端淳平/大野いと/菅田将暉/逢沢りな/古川雄輝/宮澤佐江
ナンバー 42
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


思いこんだら一直線、でも勘違いも甚だしい。中学時代は部活に明け暮れ、高校では恋する乙女に変身すると決心した少女のモテ修行を描く。なんといってもヒロインを演じた大野いとのぶっ飛んだキャラクターが大いに笑わせてくれる上、ベタなギャグに意表をついたボケ・すかさず入れる鋭いツッコミなど脚本のセンスが抜群だ。カワイイ服に身を包みオシャレなシチュエーションのデートに憧れる形から入るスタイルは軽薄だが、相手を心から思うという恋愛の本質よりも「恋をしている女」に見られたい願望を臆面もなく表に出す彼女のメンタリティがいかにも現代的な“肉食系女子”だ。


高校入学と同時に女子力アップに目覚めた晴菜は、毎日着飾ってナンパ待ちするが誰も声をかけてくれない。ある日、脱げた靴をイケメン男子のヨウに拾ってもらったのをきっかけに、晴菜はヨウにモテる秘訣を教えてもらうことにする。


かなりずれたファッションセンスと獲物を待ち構えるような目、思わず引いてしまうオーラを出しまくっているのに、本人はなぜ男に避けられているのか分からない。そんな晴菜を女嫌いのヨウが嫌々ながらもコーチしていくうちに、晴菜はヨウのトラウマを癒そうとし、ヨウは晴菜のまっすぐな気持ちを理解していく。ところがその過程はあくまでもコメディタッチで、晴菜の悩みですらネタにする貪欲さ。独特のハイテンションな世界観を最後まで維持し続けたこの映画のパワーに押されっ放しだった。


◆以下 結末に触れています◆


やがてクリスマスが近づき、ヨウの友人とデートをしたりするが、いまいち胸がときめかない。晴菜の中にヨウへの思いが芽生え始めたからなのだが、そこに来てやっと彼女は「デートは好きな人とするもの」だと気づく。本当に好きな人とお互いを思いやるのが恋であり愛である。それは、カルい男子と付き合ううわべだけ楽しさ以上に、かけがえのないぬくもりをもたらしてくれるのだ。大勢のサンタがクリスマスのダンスをするシーンは、晴菜の高校デビューを祝福しているようだった。