こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

抱きたいカンケイ

otello2011-02-24

抱きたいカンケイ NO STRINGS ATTACHED

ポイント ★★*
監督 アイヴァン・ライトマン
出演 ナタリー・ポートマン/アシュトン・カッチャー/グレタ・ガーウィグ/ミンディ・カリング/ケビン・クライン
ナンバー 43
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


頭がよすぎる女は、恋愛ですら理屈で割り切ろうとする。なかなか本気になれる相手とめぐり合えない男は女性不信になっているけれど、セックスを楽しめるパートナーは欲しい。利害が一致したふたりはセックスに限った付き合いに同意する。そこで描かれる、彼女の元にメール一本でいつでもどこでも彼が呼び出され、イッたらおしまいの関係はあまりにも即物的。彼女には恋の駆け引きなど一切無用、男は性欲を満たすための道具でしかないドライな割り切りと、それを受け入れてくれるイケメンの彼は、忙しく働く現代女性のある種の理想なのだろう。映画はセックスから愛が生まれるかというテーマとともに、繊細で不可解な女心の核心に迫る。


研修医のエマとADのアダムは偶然再会、連絡先を交換する。その後アダムは元カノが父と交際していると知って泥酔、エマのアパートに転がり込む。プライベートの時間がほとんどないエマは、アダムにセックスフレンドになろうと提案、ふたりの“会って一発”の交際が始まる。


しっかりとした将来設計を持つエマと、父の財産のおかげでカネに困っていないがいまだうだつの上がらないアダム。体だけ、というより挿入だけの間とわかっていてもいつの間にかお互いがかけがえのない存在に思えてくる。それでも、ひとりで生きていける自信と傷つくことへの恐れがエマを本当の恋から遠ざける。エリートゆえのプライドが人生の選択の幅を狭くし精神的な安定を揺さぶる、そんなエマの、最先端を走っているようで満たされない生き方しかできない不器用さが、いかにも時代の空気を反映している。


◆以下 結末に触れています◆


エマは服を着たままアダムに添い寝され一晩を過ごしたことから、一度は別れようとする。セックスはOKなのに添い寝は恋人同士の行為と頑なに否定しようとするのだ。その一方で、アダムが他の女とセックスしようとすると動揺してしまう。このあたりの自分では制御しきれない自分の気持ちを持て余すエマは、もはやドクターとしての理性よりも好きという感情に素直になった普通の女。その表情は白衣でいる時よりずっと魅力的だった。