こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

塔の上のラプンツェル

otello2011-03-21

塔の上のラプンツェル Tangled


ポイント ★★★*
監督 バイロン・ハワード/ネイサン・グレノ
出演
ナンバー 67
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


己の力で未来を選ぶ自由への憧れを歌い上げ、苦悩に満ちた現実から逃れたい思いをメロディにのせ、生きている喜びと人生の希望をリズムに刻む。ヒロインと青年が胸に浮かんだ言葉の数々を高らかに朗唱したナンバーの数々は、耳によくなじみストレートにハートに届く。おとぎ話をベースにした物語は鮮やかでソフトなタッチの動画に変換され、めくるめく映像はスリルとスピードに富んでいる。映画は、幽閉された少女が青年に導かれる外界への冒険の旅のなか、音楽で感情を表現し歌詞で夢を語る、まさにミュージカルの醍醐味というべき興奮を堪能させてくれる。


生まれてすぐに魔女・ゴーテルにさらわれて塔の上の小さな部屋で育てられたラプンツェルは、毎年誕生日に夜空を彩る光をもっと近くで見たいと願っている。そんな時、部屋に侵入した泥棒のフリンを拘束、ラプンツェルは塔から自分を連れ出すのを条件にフリンの縛めを解く。


時にゴーテルを引き上げる縄梯子になり、時にフリンを縛り付けるロープになり、時に若さと癒しをもたらす魔法の光となる、金色に輝く長い長い髪を持つラプンツェル。フリンとともに地面に降りたラプンツェルの、初めて知った草の感触、川の水の冷たさ、素足で大地を踏みしめる感動。塔の上からしか見られなかった風景に直に触れ、心まで大空を飛んでいるような解放感に浸るシーンが素晴らしい。その後、王宮の警護兵、泥棒仲間、ゴーテルと三方から追われながらもふたりは町に潜入し、ついに誕生日に夜空を漂う明りの正体を知る。湖の上に浮かべたボートの頭上を無数のランタンが舞い、ようやく巡り合えた大事な人と歌う場面は幻想的なまでに美しい。


◆以下 結末に触れています◆


やがて、ゴーテルの罠にはまったフリンとラプンツェルは、相手を助けるか自分が犠牲になるかの二者択一を迫られる。もちろんハッピーエンドに終わるのだが、ラプンツェルはショートカットの黒髪のほうがキュートに見えるのは、魔力を失うことで真の愛を知ったからだろう。