こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

SP 革命編

otello2011-03-23

SP 革命編

ポイント ★★
監督 波多野貴文
出演 岡田准一/真木よう子/松尾諭/神尾佑/野間口徹/香川照之/堤真一
ナンバー 69
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


国会議事堂内で武器の携帯を認められているのはSPのみ。出入り業者に対するチェックはおざなりで、書類の確認だけで簡単に爆発物も持ち込める。セキュリティの杜撰さはそのままわが国の危機管理の甘さを皮肉っているかのようだ。映画は国会の警備の盲点を突いたテロリストたちがごく短時間で内閣全員が出席する議会を支配下に収め、彼らが唱える“革命”を国民に呼びかける姿を追う。屋外での移動が主だった「野望編」とは対照的に、閉鎖空間で繰り広げられる活劇は息が詰まる緊迫感に満ちている。しかし、腐敗政治家突き上げのいったいどこが革命なのか。実際、今の日本では選挙で政権が交代しているわけだから、暴力に頼る必要はあるまい。


国会議員の警護についた井上は議事堂内で同僚と待機中、上司の尾形が数名の武装テロリストを率いて議場を制圧したのを知る。尾形たちは閣僚の汚職を次々と告発し、その様子のTV中継を要求する。


尾形の目的は麻田首相を殺して父(?)の仇を取ることらしいが、“革命”と大げさな物言いの割には動機が個人的過ぎる。そもそも悪徳政治家たちに銃を突きつけて吐き出させた懺悔など国民は納得しまい。こんな茶番に騙されるほど国民がバカだと思っているのなら、尾形は思い上がりもはなはだしい。下手に理屈をこねくりまわすより、孤立した4人のSPと国会議員を人質に取ったテロリストの戦いにした方がすっきりしたはずだ。まあ「ダイ・ハード」の二番煎じといわれるだろうが。。。


◆以下 結末に触れています◆


尾形の背後には政権を狙う大物政治家が控え、さらにその政治家に恩を売って政府の実権を握ろうとする若手官僚グループが糸を引いている。だが結局、大風呂敷を広げるだけ広げ、張り巡らせた伏線とちりばめた謎の答えはほとんど出ないまま、「運命の最終章」は終わってしまう。「自分の頭で考え立ち上がれ」という尾形の言葉は、TVと映画の垣根を取り払って視聴率と興行収入を上げんとする商魂丸出しのこの作品を見に来た客に投げかけられているようだった。