こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ザ・ライト -エクソシストの真実-

otello2011-04-11

ザ・ライト -エクソシストの真実- THE RITE

ポイント ★★
監督 ミカエル・ハフストローム
出演 アンソニー・ホプキンス/コリン・オドナヒュー/アリシー・ブラガ/キアラン・ハインズ/トビー・ジョーンズ/ルトガー・ハウアー
ナンバー 86
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


悪魔の存在を信じることは、神を信じること。信仰に自信を持てない神学生が悪魔祓いのOJTを通じ、自分の進むべき道を見つけていく。患者の妄想なのか本物の憑依なのか、懐疑的な主人公は現場を体験してもなお疑いの目を向ける。理性を超えた現象、しかし、対処法を学び実践すればその謎は解けなくても事態の収拾は図れる。物語はそんな、ローマカトリック教会から正式な職業として認められているエクソシストの実態を明らかにしていく。結局、正体のわからない者への不信、原因が分からない事象に対する不安こそが、人間の感情の中で恐怖を増大させているのだ。


神学校に通うマイケルはバチカンエクソシスト養成講座を受ける。悪魔憑きが精神疾患ではないかと考えるマイケルは、一流のエクソシスト・ルーカス神父のもとで実際の悪魔祓いを見聞するうちに、気持ちが少しずつ変化し始める。


16歳の妊婦は、袋に隠したマイケルの私物の中身を当てた上、太い釘を3本も吐き出す。本人とは関係のない特異な能力が発揮されるのが悪魔憑きの証拠とされる上、悪態をつき罵りの言葉を口にする。ところが、彼女の血管が浮かび上がり憎悪を湛えた表情は「実話を元にした」という割には、過去の作品から剽窃したとしか思えないような特殊メーク。さらにおどろおどろしい音楽やショッキングなカット、暗く陰鬱な映像は、まったく普通のホラー映画から受ける印象と変わらず新鮮味がない。もう少し表現方法を工夫しないと、せっかくの「学問としてのエクソシズム」という切り口が生かされてこないではないか……。


◆以下 結末に触れています◆


やがてルーカス神父までが悪魔に心を乗っ取られる。アンソニー・ホプキンスレクター博士以上の狂気と悪意に満ちた形相で悪魔の意思を体現するが、観客の心の奥まで見透かし伝染させるようなその視線は、かえってこの映画の「作り物感」を強調する結果となってしまった。