こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブルーバレンタイン

otello2011-04-27

ブルーバレンタイン BLUE VALENTINE

ポイント ★★★
監督 デレク・シアンフランシス
出演 ライアン・ゴズリング/ミシェル・ウィリアムズ
ナンバー 99
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


永遠の愛を誓ったのに、一度ずれた歯車は二度とかみ合わなくなる。あれほど彼の優しさや彼女の可愛らしさが輝いて見えたのに、今は欠点ばかり目についてしまう。倦怠期にはまだ早い夫婦に入ったひび割れは、もともと価値観が違うふたりには決定的な亀裂に広がっていく。上昇志向の女とニートの男、物語は壊れ始めた結婚生活をなんとか守ろうとする夫と終わりにしたい妻の不毛な会話とセックスを描きつつ、幸せだった思い出をよみがえらせる。恋人同士なら見つめあっていればいい、だが夫婦になれば同じ方向に顔を向けていなければ長続きはしないのだ。


シンディとディーンにはフランキーという娘がいるが、夫婦仲は冷めている。ある日、ふたりは夫婦でラブホテルに泊まりに行こうとするが、些細なことで喧嘩、シンディはディーンを残してホテルを後にする。


ディーンのだらしなさを指摘するシンディ、シンディの言葉尻をとらえては絡むディーン。そこにはもはや思いやりなどなく、自分が不幸なのはパートナーのせいだとお互いに思っている。だからこそ余計に出会ったころの記憶が新鮮な驚きで蘇ってくる。ふたりの間に横たわるのは学歴や収入差だけでなく人生そのものに対する取り組み方。勤勉なシンディと、他人への気配りはあるがカネに無縁な暮らしに満足しているディーン。その夫婦間格差が生み出す、相手を理解しようとしない感情がヒリヒリするほどリアルに伝わってくる。


◆以下 結末に触れています◆


シンディの妊娠を機にふたりは式を挙げたが、その赤ちゃん・フランキーはディーンの子ではない。それでもディーンは気にせず父親として接し、フランキーはすっかりディーンになついている。シンディの向上心とディーンの現状維持、どちらの生き方がよりよいか映画は答えを出さない。しかし、子供にとっては、血のつながりよりも家族を大切にしてくれる親のほうが絶対にいいのは確かだと、ラストシーンのフランキーの行動が示していた。