こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロシアン・ルーレット

otello2011-05-27

ロシアン・ルーレット 13

ポイント ★★★★
監督 ゲラ・バブルアニ
出演 サム・ライリー/ジェイソン・ステイサム/ミッキー・ローク/レイ・ウィンストン/マイケル・シャノン/50 Cent
ナンバー 124
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


まったくの運任せ、プレーヤーが感じる無限の恐怖と緊張がスクリーン全体に漲っていく……。サークル状に並んだ17人の男が、それぞれ前に立った男の後頭部に銃口を当て、ランプの点灯と共にトリガーを引く。6分の1、3分の1、2分の1、3分の2、回を重ねるごとに死の確率が上がり、脳みそが吹き飛ばされるか否かはすべて偶然に左右される、そんな命がけのゲームに駆り出された男の心情が手に取るようにリアルで、思わず息を詰めて椅子から身を乗り出してしまった。技量や精神力、ハッタリといった勝負事に有効な能力は必要なく、ただ躊躇なく引き金を絞る勇気があればいい。確実に銃弾を撃つ技術があってもサバイバルの条件には一切ならない究極の運だめしなのだ。映画はそれに参加した青年が体験する発狂寸前の心理を克明にとらえていく。


父の入院費に困っていたヴィンスは耳にした儲け話に内容もわからずに乗ってしまい、郊外の豪邸に連れて行かれる。そこで目にしたのはロシアンルーレット大会、ヴィンスは否応なしに拳銃を握らされ、合図が出るのを待つ。


大金目当てにエントリーした者、ヴィンスのように事情を知らなかった者、みな冷静さを保とうとするが体の震えは抑えられない。過去に出場経験がある者は開始前には余裕を見せていても、ゲームが進むにつれプレッシャーに耐えられなくなって、喚き散らしたり、足がすくんだりもする。一方で初戦では怖気ズいていたヴィンスは2回戦、3回戦と進むにつれ己の強運を信じるようになる。自分の力ではどうにもならない状況で生き残るには腹をくくるしかない、やけくそにも似た気持ちが時間が経つにつれヴィンスの表情から滾りだしていた。


◆以下 結末に触れています◆


金持ち連中が、他人の殺し合いを見物して賭けの対象にするという非常に悪趣味な設定なのだが、カメラはヴィンスの生存本能に焦点を当てることで、不快さをいつのまにか忘れさせてくれる。なにより、極限状態における人間のメンタルだけで一本の作品を作ってしまうそのアイデアに敬服した。