こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドライブ・アングリー3D

otello2011-06-02

ドライブ・アングリー3D DRIVE ANGRY


ポイント ★★*
監督 パトリック・ルシエ
出演 ニコラス・ケイジ/ウィリアム・フィッチナー/アンバー・ハード/ビリー・バーク/デヴィド・モース
ナンバー 126
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


あの世からやってきたとしか思えない圧倒的な強さは、悪党どもを追い詰めて容赦なくぶち殺す。ハンドルを握るのはふた昔前の大排気量のアメ車、エンジンが低く咆哮しタイヤが白煙を上げながら悲鳴を上げる。謎の男と追われる男、さらに彼らを追跡する監察官、映画は壮絶なカーアクションと血なまぐさい暴力にいろどられ、殺戮をエスカレートさせていく。銃弾、クルマ、バット、金属片など、あらゆる小物が飛び出す映像は、3D本来の見世物的楽しさに回帰する。


生けにえにされる赤ちゃんを救出するためにカルト教団の教祖・ジョナを探すミルトンは、恋人と喧嘩分けれしたパイパーとともに彼らの礼拝に殴りこむ。一方、FBI監察官を名乗る男はミルトンの居場所を匂いから識別していく。


パリッとしたスーツを着こなし、あくまで無表情に関係者を尋問する監察官は、人間離れした身のこなし。パイパーの恋人をなぶり殺しにする時もまったく顔色を変えず、むしろ超越したパワーを行使する姿はユーモアすら感じさせる。その上高くトスしたコインを手の中でFBIの身分証に早変わりさせるという手品まで見せてくれる。どこか薄汚く影を引きずった雰囲気を漂わせたいわくありげなミルトンを演じるニコラス・ケイジに対し、ウィリアム・フィッチナー扮する監察官の不気味な存在感は、B級テイストあふれるこの作品にある種の気品を与えていた。


◆以下 結末に触れています◆


ジョナの教団に追いついたミルトンは礼拝に乱入する。そこであっさりパイパーを人質にとられた末に顔面に銃弾をぶち込まれて左目に大きな穴が開くのだが、すぐに生き返る。ここにきてやっと彼が生身の人間ではなく、たった一人の血縁者の生けにえの赤ちゃんをジョなの手から取り戻すためによみがえった地獄からの使者であることがはっきりする。そして監察官は冥界の番人、この“いかにも”な設定には思わず笑ってしまった。「マッチョな男」「セクシーな女」「スパルタンなクルマ」の3点セットを喜ぶ大衆にはたまらない魅力の作品に仕上がっている。