こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

行け!男子高校演劇部

otello2011-06-11

行け!男子高校演劇部

ポイント ★★★*
監督 英勉
出演 中村蒼/池松壮亮/冨田佳輔/川原一馬/金子直史/稲葉友/佐藤永典/新川優愛/足立梨花
ナンバー 137
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


子供じみたギャグからナンセンスなボケ、そして意表を突くパロディ。俳優たちの大げさな演技と相まって、思わずイスから転げ落ちてしまうほどのユニークな世界観を構築している。主人公と友人たちの少しズレた感覚が交じりあい刺激しあって相乗効果をもたらし、ブレーキの効かない笑いの波状攻撃となってスクリーンから襲い掛かってくる。映画は、高校の演劇部に入ってしまった新入生が芝居の楽しさに目覚めていく過程で、バカになりきることで自分らしさをさらけ出すだけでなく、一緒に夢を追う友情の大切さにも触れ、さわやかなカタルシスさえ味あわせてくれる。


男子高に入学したオガは「ロミオとジュリエット」の公演を見て、ジュリエットに一目ぼれして演劇部に入部、引退した3年生に代わっていきなり部長を任される。部を存続させるために部員を勧誘するが、集まったのは演劇に興味はないがクセのある連中ばかりだった。


オガが部員の頭数をそろえようと親友のカジに入部を頼むシーンがケッサクだ。ファミレスで隣席のカップルがプロポーズしている場面とシンクロし、断り続ける相手の首を縦に振らせるために果てはジュースを口から飛ばしながら半ば脅してお願いする。あまりのくだらなさに、見ている方も噴き出してしまった。さらに、老人ホームでの初公演は「桃太郎」、ここでも鬼と猿が大活躍するという変化球を投げてくる。全編にわたり、練り込まれたショートコントのようなエピソードの連続はベタと洗練が表裏一体、最初から最後までそのテンションは落ちない。


◆以下 結末に触れています◆


やがて彼らは演劇コンクールに出場を目標に猛稽古を始める。演目は「最後の一葉」。ここでも、マネキンを使う斬新な解釈と演出で、枝から落ちるツタの葉の気持ちを見事に演じてみせる。もちろん正統な演劇とはほど遠い、それでも客席と一体になり、緊張感を共にする点においてまさにライブパフォーマンスの醍醐味だ。会場から発せられる「バカコール」は彼らには最高のほめ言葉、それをそのままこの作品の作り手にも贈りたい。