こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

X-MEN:ファースト・ジェネレーション

otello2011-06-14

X-MEN:ファースト・ジェネレーション
X-MEN: FIRST CLASS

ポイント ★★★*
監督 マシュー・ヴォーン
出演 ジェームズ・マカヴォイ/マイケル・ファスベンダー/ローズ・バーン/ジャニュアリー・ジョーンズ/オリヴァー・プラット/ニコラス・ホルト/ルーカス・ティル/ゾーイ・クラヴィッツ/ジェニファー・ローレンス
ナンバー 142
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人とは違う特別な能力があるゆえに異端視され、時に敵視される。さらに彼らを利用して何らかの利益を生み出そうとする者まで現れる。だからその能力を隠し息をひそめて暮らさなければならない。映画はミュータントたちが歩む苦難の歴史にスポットを当て、真の敵は人間の胸に潜む未知なるものに対する偏見や恐怖心であると喝破する。見た目がノーマルな者は能力を制御できればごまかせる、だが、姿形そのものが突然変異の結果と分かる種類のミュータントにとって、生きることは人目を避け続けるのと同じ。そんな、外見にコンプレックスを抱くミュータントの苦悩と葛藤がリアルに再現されている。彼らとて心は普通の人間と同じなのだ。


ナチのユダヤ人収容所で磁力を操る能力に目覚めたエリックは、戦後、母を殺した元SS将校を追う。一方、強力なテレパシーを授かったチャールズは、青い肌の少女・レイブンと出会い、ミュータントが他にもいるのを知る。大人になったエリックはショーと名を変えた仇敵を追い詰めるが返り討ちにあい、チャールズに救われる。


彼らはCIAにスカウトされ、チャールズの能力で米国中のミュータントを集め訓練を施そす。逆にショーはソ連軍を悪用して第三次世界大戦を企んでいる。キューバ危機のさなか、米ソの緊張を背景にチャールズ率いるミュータントとショーの配下が超能力戦争を繰り広げるが、まだ戦い方が洗練されていない第一世代のミュータントたちは力技で相手を倒そうするため、非常に派手な映像に仕上がっている。


◆以下 結末に触れています◆


ほとんどのミュータントたちはパワーをコントロールする術を学びつつも闘いの場ではそれを誇示するのに対し、破壊的ではないレイブンは己の能力を捨てたいとさえ願っている。自由に変身できるが本当は青い肌、チャールズに恋心を抱いても相手にされないのは醜い体のせいと彼女は思い込んでいる。劣等感にさいなまれるレイブンにエリックだけは青い肌に誇りを持てと忠告する。服を脱ぎ捨て素肌に露わにするレイブンの精神的な成長こそが、この作品の真のテーマではないだろうか。ありのままの自分を愛せという。。。