こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

SUPER8

otello2011-06-16

SUPER8

ポイント ★★★★
監督 J・J・エイブラムス
出演 エル・ファニング/カイル・チャンドラー/ロン・エルダード/ノア・エメリッチ/ガブリエル・バッソ
ナンバー 144
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


家族が寝静まった深夜、自宅を抜け出して友だちと合流する5人の少年と1人の少女。誰もいない小さな駅で始まる8ミリ映画の撮影は“大人には教えたくない秘密”のワクワク・ドキドキ感がいっぱいだ。期待と不安、そして自分たちが特別な何かになったかのような優越感など、そろそろ親の束縛から自由になりたい少年少女たちの少し背伸びしたい思いが共感を呼ぶ。そこで生まれるのは、秘密を共有した者だけの固い友情とほのかな恋心。さらに偶然「見てはいけないもの」を見てしまった強烈な体験は、彼らの絆をより深くする。


田舎町の中学生・ジョーは、映画製作仲間のチャールズたちとゾンビ映画の撮影中に列車脱線事故をすぐそばで目撃する。翌日から現場一帯は軍の管理下に入り、街では数人が行方不明の上にクルマのエンジンばかり盗まれる事件が頻発する。


ジョーたちは撮影を続けるが、その過程で列車の怪しげな積み荷や貨車から立ち去った謎の生物の存在を知ってしまう。一方でジョーが想いを寄せるアリスがさらわれたため、軍の拘束を逃れて彼女を助けようとする。その間、ジョーやチャールズの気持ちを占めるのは、アリスを救いたいという願いだけ。知恵を絞って協力し、それぞれが得意分野を生かして状況を打開していこうとする、彼らが成長していく姿が頼もしい。まだ動画を撮るのはプロか一部の趣味人だけだった1979年当時のディテールが豊かで、あの時代を生きた観客のノスタルジーを刺激し、また非常にスピルバーグ色の強い映像の数々は「E.T.」を思い出させる。


◆以下 結末に触れています◆


母を失い父と衝突ばかりしているジョー、飲んだくれの父に胸を痛めているアリス、父親同士の確執、チャールズの家庭など、少年たちと家族の関係が濃やかに描写されていて、それがアリスを巡る2人の微妙な駆け引きになるなど、少年たちの感情が手に取るようにリアル。エイリアンとは心を通わせることはできる、だがそれ以上に大切なのは身近な人々との心の交流であることをこの物語は訴える。何より、エンドロールが象徴する、“映画”そのものに対する愛情があふれる作品だった。