こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

チョン・ウチ 時空道士

otello2011-07-06

チョン・ウチ 時空道士


ポイント ★★
監督 チェ・ドンフン
出演 カン・ドンウォン/キム・ユンソク/イム・スジョン/ユ・ヘジン/ソン・ヨンチャン/キム・サンホ/チュ・ジンモ
ナンバー 139
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


弱きを助け強きをくじく、でも性格は奔放で好奇心旺盛。道士としての力も一級品で妖怪退治はお手のもの。圧政に苦しむ中世朝鮮、民衆のヒーローとして伝説となっていた男が500年の時を経て現代によみがえる。映画は、主人公が操る道力=魔力を洗練されたワイヤアクションとハリウッド的なCGで表現し、朝鮮半島に伝わる超自然的なパワーに対する価値観を描き込む。護符や如意棒、木切れや箒を使った分身の術などの西洋の魔法とは一味違った効果が楽しめる。不老不死の仙人が21世紀の韓国ではキリスト教神父の身分を隠れ蓑に使っているところが笑える。


妖怪を封印する力を持つ笛を手に入れようとする道士ファダムは、持ち主の高名な道士を殺し笛を奪った上に弟子のチョン・ウチに罪を着せる。ウチは仙人によって掛軸の中に封印される直前、笛の半分を奪う。そして現代、蘇った妖怪を退治するために、ウチは掛け軸から呼び出される。


元々イタズラ好きウチは、人間の姿に化けた犬・チョレンと共にすっかり変わり果てた街の風景に驚きながらもそのライフスタイルを楽しんでいる。まったく初めて見るものばかりなのに、ウチは孤独や恐怖、不安を感じることもなく、すぐに街に馴染んでいる。本来なら韓服に身を包んだ彼がトンチンカンな行動で笑いを取るはずなのだが、そのあたりはあっさりスルーして、500年前に因縁を持った後家とそっくりな女に入れ込んでしまう。物語は、寄り道ばかりで本来の妖怪退治がなかなか進まないうえ、仙人やチョレンのドタバタぶりからコメディの様相を呈してくる。


◆以下 結末に触れています◆


プロローグともいえる時代劇のシーンに延々と50分も費やすなど、非常にテンポがのろいのが難点。ウチが天帝に化けて王を諌めた後、すぐにファダムの姦計にはまるくらいのスピード感がないと観客の興味を引き続けられないのではないか。たしかにチョン・ウチに扮したカン・ドンウォンは非常に魅力的で、脇を固める俳優たちも個性的。だが、展開に締まりがないため冗長な感じは否めない。あと30分上映時間を短かくすればよかったと思うが。。。