こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2

otello2011-07-18

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2
HARRY POTTER AND THE DEATHLY HALLOWS


ポイント ★★★★
監督 デヴィッド・イェーツ
出演 ダニエル・ラドクリフ/ルパート・グリント/エマ・ワトソン
ナンバー 171
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


命がけで誰かを助けようとする者は人々の信頼を勝ち取り、恐怖で支配しようとするリーダーは最後には見捨てられる。自分を敵視する同級生に手を差し伸べる主人公と、己の欲望のためには部下を躊躇なく殺す男。結局、ハリーとヴォルデモートの人間的魅力の差が勝敗の帰趨を分ける。善悪の区別があいまいになった21世紀において、悪は絶対的な悪と定義する世界観は明確だ。だが、ハリーの心の師ともいえるダンブルドアがハリーの死を冷徹に想定していたり、ヴォルデモートに忠実な男が二重スパイだったりと、予想もしなかった人物の別の顔が次々と明らかにされる。原作の持つ陰鬱で絶望的な雰囲気をそのままスクリーンに反映させ、映画は壮大な視覚効果をもってシリーズの大団円を迎える。


分霊箱を求めて旅をするハリーはホグワーツに戻るが、スネイプが校長となった学校は活気を失っている。一方、ニワトコの杖を手に入れたヴォルデモートはハリーと雌雄を決するために配下の魔法使いを集めてホグワーツを攻撃する。


もはや味方を頼める大人はすべて死に、ハリーと仲間だけで運命に決着をつけなければならない。しかも彼自身がヴォルデモートの分霊箱にされている不運。魔法使いとしての能力は復活したように思われるヴォルデモートに鼻も髪の毛もないのは、ハリーを倒して初めて完全な肉体に戻るということなのだろうか。そして、死んだと思われたハリーがハグリットの腕から復活し、ホグワーツ対ヴォルデモート軍団の闘いの火ぶたが切られる。


◆以下 結末に触れています◆


エピローグ、ハリーは恩人2人の名をつけた息子をホグワーツに送りだすが、そこにはドラコの姿も見える。炎の中からハリーに救われ、最終決戦では両親とともに戦列を離れたドラコ。家族でヴォルデモートに忠誠を誓いながらも最終的に裏切ったのは、ハリーの正しさを理解したから。そもそもホグワーツ入学時にハリーに声をかけていたドラコ、本当は友達になりたかっただけなのだ。19年の時は彼らのわだかまりを解いたのか、ホームに立つ2人の視線と微妙な距離感がその答えを象徴していた。あと本筋とは関係ないが、半裸になったハリーに濃い胸毛へそ毛が生えていたのには幻滅、魔法を使う前にムダ毛の処理をしてほしかった。。。