こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゴモラ GOMORRA

otello2011-07-26

ゴモラ GOMORRA


ポイント ★★★*
監督 マッテオ・ガローネ
出演 サルヴァトーレ・アブルツェーゼ/シモーネ・サケッティーノ/ジャンフェリーチェ・インパラート/マリア・ナツィオナーレ/トニ・セルヴィッロ/カルミネ・パテルノステル/サルヴァトーレ・カンタルーポ
ナンバー 177
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


年端のいかない少年から血気盛んな若者、中年のベテラン職人、そしておとなしく生きる老人etc. 銃器をぶっ放して暴走するチンピラから正業に就いて働く人々まで、ここで暮らす住人はすべて何らかの形で裏社会とかかわっている。正式にギャングの構成員になっている者だけでなく、毛細血管のように日常生活の隅々まで張り巡らされた人脈によって住民は意識せずとも闇組織に貢献し利益を享受している構図。いや、汚れ仕事ですらカネになれば進んで引き受ける彼らの存在なしにはもはや社会が成り立たなくなっている。そんな、欧州の発展から取り残された南部イタリアに巣食う犯罪組織・カモッラの現実をカメラは徹底したリアリズムで追う。


抗争が絶えない地域で日用雑貨の配達を手伝うトトは組織の一員となろうとする。給料の配達人・ドン・チーロは組織を裏切る選択を迫られる。大学を卒業したばかりのロベルトは産廃処理会社に就職する。腕のいい仕立て職人・パスクワーレは中国人にスカウトされる。マルコとチーロはケチな犯罪を繰り返し、組織ににらまれる。


5つの物語が同時進行で展開するが、華やかなファッション界の裏側をえぐるパスクワーレのエピソードが衝撃的。安い工賃・短い納期を押し付けられた彼が社長のやり方に嫌気がさし、マエストロと呼んで自分のスキルを評価してくれる中国人に技術指導をする。もちろん社長は許さないが堅気のパスクワーレには警告するに留め、中国人に制裁を加える。低賃金の不法就労者を使う業者との価格競争にさらされた地場産業を守るギャング、ある意味彼らは地元住民の雇用を担っているわけで、その暴力が“悪事”とは言い切れないところに問題の根の深さを感じさせる。


◆以下 結末に触れています◆


また、ロベルトは最初こそやりがいを覚えるが、やがて北部やフランスから持ち込まれる有害物質を不法投棄する現場や非人間的な労働環境の実情を目の当たりにして戸惑いを覚える。やっと見つけた働き口だが、良心がうずき始め、期待が絶望に代わっていく。当然、産廃業者もまたカモッラとつながっている。「北で一人を助け南で一家を殺す」というセリフに象徴されるイタリア、いやEUの南北格差。それでもこの地で生きていく限り、誰かがこれを続けなければならない。映画はロベルトの心の動きを克明にとらえ、最後に彼に行動を起こさせることで救いのないドラマにわずかな希望を与えている。