こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

レイン・オブ・アサシン

otello2011-07-27

レイン・オブ・アサシン 剣雨


ポイント ★★*
監督 スー・シャオピン
出演 ミシェル・ヨー/チョン・ウソン/ワン・シュエチー/バービー・スー/ショーン・ユー/ケリー・リン/グオ・シャオドン
ナンバー 163
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


武術の達人たちが宙を舞い壁を駆ける。彼らの重力に逆らった動きに同調するようにカメラも縦横無尽に空間を切り取る。そのめくるめく感覚はワイヤーアクションの新しい境地、中国映画がまだまだアクションの分野で発展する可能性を実感させてくれる。さらにヒロインが放つ剣の一撃は竹のようにしなり相手の急所に突き刺さる。特撮技術を駆使した格闘シーンはリアリティには程遠いが、一種の様式美すら感じさせる幽玄の世界。映画は素性を隠して市井に生きる男女の運命が反転していく過程を通じて、真の愛とは何かを問うて行く。


手に入れた者は武術界の覇者になるといわれる達磨のミイラを手に入れんとする組織の女刺客・細雨は突然姿を消し、顔を整形して曾静と名乗る。やがて彼女は街の配達人・阿生と結婚するが、金融機関で強盗を退治したのをきっかけに、秘密を阿生に気づかれる。


彼女を追う組織は曾静こそ細雨と見抜き、次々と3人の殺し屋を送りこんでくる。中でも針を武器にする男との死闘は、まさに武侠映画の真骨頂。目にも止まらぬ剣さばきと、予想もしないタイミングで飛び出す仕込み針の応酬はしばし時間を忘れてしまう。一方で曾静の過去に感づきながらも平静を装う阿生にも、なんらかの事情がほの見えてくる。まあ、チョン・ウソンが演じているからただの不器用な男で終わるはずはないのだが。。。


◆以下 結末に触れています◆


その後も、曾静に襲い掛かる殺し屋たちが雇い主である組織のボスと対立したり、ボスにも意外な事実が隠されていたりと、話は二転三転する。このあたりは少し整理がついておらず各々のエピソードが中途半端。もっと主要登場人物を絞り込み、キャラクターに奥行きを持たせた方がよかったのではないか。そして阿生の正体も明らかになるが、同じ手を二度使いまわすのは芸がなさすぎ、衝撃の真実というにははなはだ心もとないものだった。結局、阿生は曾静を許すことができたのだろうか。。。