こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

黄色い星の子供たち

otello2011-08-01

黄色い星の子供たち La Rafle

ポイント ★★*
監督 ローズ・ボッシュ
出演 メラニー・ロラン/ジャン・レノ/シルヴィ・テスチュー
ナンバー 182
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ついこの間まで隣人であり友人でもあった人々が、ある日を境に排除の対象となる。彼らを積極的に追い出そうとする者、命がけで援けようとする者、火の粉が降りかかるのを恐れて傍観する者。それぞれが自分の置かれた立場でどうふるまうべきか考え、選択を迫られる。物語はドイツ占領下のパリで起きたユダヤ人狩りを題材に、当時のパリ市民とユダヤ人が置かれた複雑な状況をスケッチする。ユダヤ人の中にも楽観的な者がいるかと思えば、生存のチャンスを逃すまいともがく者がいる。一方でナチスに協力する官憲に非難を浴びせる市民もいる。人間の価値が試されるときだれもが英雄的にふるまえるわけではない、映画は様々な人生にスポットを当て、正義が失われた時代に人は何ができるかを問う。


ユダヤ人少年・ジョーとその家族は様々な制約の中でも希望を捨てずに暮らしていたが、ユダヤ人一斉検挙で室内競技場に連行される。ユダヤ人たちの健康を管理するダヴィッド医師と行動をともにする非ユダヤ人看護婦・アネットは献身的に働き、彼らを救おうとする。


ペタン元帥に忠誠を誓う歌を小学生が歌っていたが、ペタンはフランス国民の間ではドイツと休戦しパリの美しい面影を破壊から守った指導者として人気があったようだ。ところがペタンはヒトラーの要求に屈しユダヤ人をナチスに差し出す。ユダヤ人が被害者であるのは事実だが、この作品がペタンの決断を糾弾しないのは、いまだその歴史的評価が定まっていないからなのか。


◆以下 結末に触れています◆


やがてユダヤ人たちは収容所に移送され、アネットも同行する。貧しい食事に怒りを隠さないアネットは知事に談判して食料を調達する。だが、なぜ彼女はそれほどまでユダヤ人のために尽くすのか、看護婦の職業的使命感だけではとても説明がつかないが、もしかしてダヴィッド医師を愛していたということなのだろうか。いや、作り手は彼女のキャラクターでフランス人の気高き誇りを描きたかったに違いない。