こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

復讐捜査線

otello2011-08-03

復讐捜査線 EDGE OF DARKNESS

ポイント ★★
監督 マーティン・キャンベル
出演 メル・ギブソン/レイ・ウィンストン/ダニー・ヒューストン/ボヤナ・ノヴァコヴィッチ/ショーン・ロバーツ
ナンバー 184
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ふとした瞬間に蘇る娘との思い出。微笑ましく懐かしいほど、喪失感が浮き彫りにされる。娘を殺したヤツを絶対に見つけ出して復讐する。いや、それ以上に離れていた時間、彼女が何を考え、誰と付き合い、どんな暮らしをしていたかを知りたい。そんな、残された父親の心境がリアルだ。映画は、目の前でひとり娘を惨殺された刑事が事件を捜査するうちに、巨大な悪意が背後で糸を引いていることに気づいていく姿を描く。だが、秘密を守るためには殺人も厭わない組織なのに単独行動する主人公に振り回されたり、また時折顔を出す謎の人物の立場もはっきりしないまま。脚本の脇が甘い作品だった。


ボストン市警刑事・トムの家に賊が押し入り、久しぶりに帰宅していた娘・エマを射殺する。トムはエマの身辺を整理するうちに、彼女が勤務先・ノースモア社の核疑惑を過激な環境保護団体を通じて告発しようとしていた事実をつかむ。


突然の吐き気と吐血、そして疲労感が抜けず徐々に蝕まれていく肉体。放射線を浴び、放射線を浴びた食品を口にした者が内部から健康が損なわれてゆっくりと死に至る様子は、決して丁寧な描写ではないが、原発事故で汚染が広がっている日本の現状を鑑みると、不気味なリアリティを伴って見る者に迫ってくる。


◆以下 結末に触れています◆


捜査が進むにつれノースモア社に核兵器密造の嫌疑が持ち上がる。指揮をとる所長、昵懇の上院議員、さらに弁護士などの関係者をトムは当たっていく。一方で会社側は情報提供者の口を封じていく。そこにジェドバーグというもみ消し屋がトムと議員双方と繋がっていたりと、根は悪党ではないが悪党に手を貸す者や善人だが恐怖に打ち勝てない者が入り混じって、話がやたら複雑になる。せっかくメル・ギブソンが帰って生きたのだから、もっとエピソードをすっきりさせスピーディな展開にしたほうがよかったのではないだろうか。結局“真実に見せかけたウソだらけ”の言葉通り、関わった者が皆死んでしまったら何が真実だったのかわからないままではないか。。。