こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

探偵はBARにいる

otello2011-09-02

探偵はBARにいる


ポイント ★★*
監督 橋本一
出演 大泉洋/松田龍平/小雪/西田敏行
ナンバー 175
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


深夜のバー、黒電話、頼りない助手、ポンコツ車etc. 一見、時代の流れから取り残された小道具に囲まれて、欲望の渦巻く街の裏の顔を見守り続けてきた探偵。彼にかかってきた正体不明の女からの電話の意味深長な依頼は、謎が謎を呼び、探偵をミステリーの迷宮にいざなっていく。そして、巧みにまぶされたコミカルなやり取りは’70年代の雰囲気をまとい、ビタースィートな香りをまき散らす。物語は、封印されていた過去を掘り起こそうとする主人公が、殺人事件の背後にある巨大な悪の存在に気付きながら真実に近付いていく過程で、人間がその強さと弱さをさらけ出していく瞬間を目の当たりにする姿を描く。


札幌・ススキノの探偵は、コンドウキョウコと名乗る女のメッセージを有名な弁護士に伝えるが、直後に黒服の男たちに拉致され雪に埋められる。不審な匂いを嗅ぎつけた探偵は、真相を暴こうと独自に調査を始める。


その後もキョウコの指示通りに動くうちに、探偵は1年前の実業家暴行殺人事件に行きつき、さらに沙織というクラブの美人ママと知り合う。そこからは複雑な人物相関図のもつれた糸をひとつひとつほぐしていくような謎解きの興味と共に、探偵と助手の気の抜けた会話が楽しめる。だが、この助手が北大農学部研究者の専門知識を生かしてもっと重要な役割を果たすのかと思いきや、街のチンピラを得意の空手でぶちのめすくらいで今一つ物足りない。彼を演じた松田龍平の父が「探偵」を当たり役にしていただけに、もう少し活躍を期待したのだが。


◆以下 結末に触れています◆


沙織はもともと殺された実業家・霧島の妻だったが、霧島が撲殺される直前、わざとらしく「ケータイを忘れた」と言って霧島をひとりで夜の街に送りだす。そこに、サクラの女と暴漢が待ち受けていたわけだから、このシーンは明らかに沙織が事件に一枚かんでいる印象を受ける。これでは、後半明らかになっていく沙織と霧島の関係と矛盾しているのではないだろうか。。。