こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

世界侵略:ロサンゼルス決戦

otello2011-09-20

世界侵略:ロサンゼルス決戦 BATTLE: LOS ANGELES


ポイント ★★★
監督 ジョナサン・リーベスマン
出演 アーロン・エッカート/ブリジット・モイナハン/ミシェル・ロドリゲス/マイケル・ペーニャ/Ne-Yo
ナンバー 223
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


兵隊さんはカッコイイ、敵をいっぱいやっつけて勲章を胸につけているから。兵隊さんはタフ、毎日過酷な訓練に耐えているから。兵隊さんは強い、さまざまな兵器の扱いに熟練しているから。兵隊さんは情が篤い、死んだ部下の事をすべて記憶しているから。兵隊さんは頼りになる、命がけで民間人を助けてくれるから。兵隊さんは勇敢、強力な火器で武装したエイリアンが攻めてきても逃げないから。そして、兵隊さんは絶対にあきらめない。。。2時間近く延々と繰り返される軍人賛美は、むしろそのプロパガンダ性が心地よく、高揚感さえ覚えてしまう。侵略目的のエイリアンから地球を守る、まさにこれこそ米国がしたかった“正しい戦争”。人種・性別に関係なく、米国軍人の誇りを高らかに謳いあげる物語はかえって清々しい。


世界中の海岸線に宇宙船が落下、エイリアン部隊が上陸し沿岸部諸都市は破壊される。ナンツ二等軍曹は新任の隊長と数人の部下と共に、エイリアン制圧地域に取り残された数人の市民を救出に向かう。


はるか宇宙のかなたからやってくる科学力を持っているのだから、エイリアンの武力はもっと洗練されているのかと思ったが、意外にそれほどでもない。地球人が経験のないだけで、きちんと研究すれば弱点もある。負傷したエイリアンを解剖すると急所が見つかるなど、決して米軍の手に負えないレベルではない。この、火力ではやや劣っているが戦術次第では勝てる設定が、ナンツたちに勇気とアイデアをひねり出させ、最後まで立ち向かう姿に説得力を与えている。


◆以下 結末に触れています◆


カメラはナンツらとともに銃弾とエイリアン機が飛び交う最前線を駆けまわり、細部に至るリアリティと臨場感で見る者を圧倒する。その間、米国海兵隊員および空軍兵が、いかに責任感と愛国心が強く自己犠牲をいとわず、屈強かつ優秀な人材であるかを描くことに終始し、こんな精鋭ぞろいの軍隊を保持する米国の傘下にいれば日本人も安心していられるのではないかという錯覚を抱かせる。もはや、戦争における“正義”は、エイリアン相手にしか通用しなくなったのだろうか。。。