こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ランゴ

otello2011-09-22

ランゴ RANGO


ポイント ★★★
監督 ゴア・ヴァービンスキー
出演 ジョニー・デップ/アイラ・フィッシャー/アビゲイル・ブレスリン/ビル・ナイ
ナンバー 216
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


乾いた大地からは土煙が舞い、雲ひとつない青空からは太陽が容赦なく照りつける。そんな荒野に、主人公は己が王様でいられた小さな世界からいきなり放り出される。物語は、ヒーローに憧れていたカメレオンが、冒険と共に本当は何者になりたいのかと自己を見つめ直す過程で、真剣に人生に向き合うとはどういうことかを学んでいく。心をわしづかみするような旋律、悪党がのさばるさびれた町、銀行強盗と砂漠の追跡劇、クローズアップの多用etc. 徹底的にマカロニウエスタンのテイストを追求した上、さまざまな名作を思い出させる疾走感あふれるアクションシーンを加えた映像は懐かしさと興奮を運んできてくれる。


ハイウェイに置き去りにされたペットのカメレオンは、水を求めてさまよううちにメストカゲと出会ってダートタウンという町に連れて行かれる。そこでは水を武器に町を牛耳る町長の下、住民が苦しい生活を強いられていた。


ランゴと名乗ったカメレオンは夢を叶えるチャンスとばかりに嘘の武勇伝を吹きまくり、偶然タカを退治したのを認められて街の保安官に任命される。さらに自警団を組織して水泥棒を追ったりするが、大した努力もせずに大物気分になっていく。もちろん、ランゴに町を乗っ取るほどの野望などないが、どこか尊敬を集めているのが気持よく、ますます調子に乗る。だが、やがてこの町に隠された大いなる陰謀に気づき、命がけで戦うのかしっぽを巻いて逃げるのか選択を迫られる。


◆以下 結末に触れています◆


町の住民から見ればランゴは得体のしれない流れ者。1950〜60年代の西部劇ならば米国製・イタリア製を問わず、たとえ映画が流れ者の視点で描かれていても、それら流れ者はクールな装いを解かず考えをほとんど表に出さない。しかしランゴの目的は明白、もしかして、かつてC・イーストウッドフランコ・ネロが演じた流れ者のガンマンたちも、意外と自分探しの旅をしていたのではないかと想像させる作品だった。