こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リミットレス

otello2011-10-04

リミットレス LIMITLESS


ポイント ★★*
監督 ニール・バーガー
出演 ブラッドリー・クーパー/ロバート・デ・ニーロ/アビー・コーニッシュ/アンドリュー・ハワード/アンナ・フリエル
ナンバー 235
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


感覚が研ぎ澄まされ、あらゆる刺激に対して敏感になり、目や耳から入る過剰な光と音が蓄積され高速で処理される。過去の経験を細部まで思い出し、今起きている事象から未来を正確に予測する。かつて体験のない全能感に浸る主人公の主観映像は、異次元を疾走しているようなスピードと色彩。それはまさに、「見るトリップ」、脳内の情報伝達が加速する様子がスタイリッシュにビジュアル化されている。映画は、脳の働きを100%活性化させる魔法のクスリを服用した男が経験する成功と没落、愛と苦悩を通じて浅はかな人間の欲望を描く。


売れない作家・エディは義弟のヴァーノンがくれた錠剤を飲むと世界が一変、フレーズが次々と頭にわき、一晩で新作のプロットを書き上げる。だが効果は1日限り、もう一度錠剤をもらおうとヴァーノンのアパートを訪ねるが、ヴァーノンは何者かに殺される。


間一髪大量の錠剤の隠し場所を見つけたエディは、毎日口にして超人的な記憶力と計算力を身につけ小説を完成させる。ところが、エディは本を出版すると作家として名を残す夢を早々と捨て、カネ儲けビジネスに軸足を移すのだ。やりたいことがすべて実現し、願いがすべて叶ううちに卑小な人間に成り下がる。バブリーな暮らしに満悦している姿はいかにも“俗物”で、凡人が思わぬ幸運を持て余し、物質的な豊かさに浸って現実を認識しようとするさまが非常にリアルだ。


◆以下 結末に触れています◆


エディは大物投資家・ルーンに取り入る一方、錠剤を狙う別の組織から身柄をマークされる。その間も覚醒と禁断症状を繰り返し、次第に意識が飛び集中力が続かなくなっていく。もはや破滅の一歩手前まで追い込まれてしまう。結局、ルーンの言葉通り、エディの能力は努力して勝ちえたものではなく「突然変異的に手に入れたもの」でしかない。そんな男にあの結末は甘すぎるのではないか。不起訴とはいえ殺人を犯しているわけだし、何らかのツケは払わせるべきだろう。。。