こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コンテイジョン

otello2011-10-21

コンテイジョン CONTAGION


ポイント ★★★*
監督 スティーヴン・ソダーバーグ
出演 マリオン・コティヤール/マット・デイモン/ローレンス・フィッシュバーン/ジュード・ロウ/グウィネス・パルトロー/ケイト・ウィンスレット
ナンバー 244
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


世界の崩壊が迫っているとき、人は何をなすべきか。科学者としての責任感から対処法を見つけようとする者、現場に出て指揮を執る者、自らの信念に基づいて治療法を公開する者。ほとんどの人々は良識を持ってこの危機を乗り越えようとするが、一方で知人を助けると他者を犠牲にしなければならない。善意や好意が必ずしも「正しい行い」と受け取られるわけではなく、物語はそれらの人々の「良心の質」を問う。ひとりの感染者が数人に接触し、そこからウイルスをまき散らす。幾何級数的な広がりの速さと死の恐怖が伝播する様子が緊迫感あふれる映像で描かれる。


香港出張からミネアポリスの自宅に帰ったベスは、突然痙攣・発熱し急死する。アジアや欧州でも同じ症状の患者が急増、米当局とWHOが対策本部を設置、感染源の究明とワクチンの開発を急ぐ。


いち早く感染症を見抜いたWEB記者のアランは独自に特効薬を見つけブログにアップ、ネット上で話題になり、ウイルスよりも早く巷間に流布していく。さらに彼のもとには情報が集まり、当局の対応のまずさを批判し身内を優遇した責任者を糾弾する。アランは決してジャーナリストの正義感だけで活動しているのではないが、危険に飛び込む勇気は功名心だけではないだろう。他方、WHO職員・レオノーラは香港での調査中、中国人に拉致され、ワクチンの取り引き材料にされる。ところがレオノーラは弱者である中国人に理解を示す。


◆以下 結末に触れています◆


レオノーラの優しさもまた、純粋に善良な気持ちがもたらしたものだが、混乱を呼ぶ短慮と思えなくもない。ある意味、略奪に走る市民も息子や娘のためにやむを得ず手を染めたのかもしれない。ゆえにアランやレオノーラおよびその他の登場人物の行為の評価は観客に委ねられる。他人に働きかければ少なくとも現状に何らかの変化が起こるはず、映画はエモーショナルを排して彼らの姿を描写することで、己の価値観に従って行動する覚悟を見る者に突きつけているのだ。