こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パラノーマル・アクティビティ3

otello2011-10-28

パラノーマル・アクティビティ3
PARANORMAL ACTIVITY 3

ポイント ★★*
監督 ヘンリー・ジュースト/アリエル・シュルマン
出演
ナンバー 249
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


大人には見えないものも、まだ幼い娘の目ははっきりととらえている。「それ」はおそらく恐ろしい姿ではないのだろう、彼女とは仲の良い友人のような関係を築いている。あの悲劇からさかのぼること十数年、映画は「それ」の犠牲になった姉妹の幼少期にさかのぼり、彼女たちがなぜ事件に巻き込まれたのかを探る。家屋内の監視カメラとハンディカメラの映像をドキュメンタリー風に作り込む手法に新鮮味はないが、さりげない日常が少しずつ歪んでいく違和感自体は健在。扇風機を改造した首ふりカメラが記録した、前と後のシーンとは違うものが映っていたり、場所が変わっていたりするという、ジワジワと迫ってくる不気味さには背筋がすくむ。


デニスとジュリー夫婦、娘のケイティとクリスティは新居に引っ越すが、子供部屋の納戸から何度も異音が聞こえだす。ビデオカメラマンのデニスは寝室と子供部屋、リビングルームに監視カメラを設置、24時間体制で異音の正体を突き止めようとする。


変化の乏しい退屈なモノクロ映像が「それ」の気配を発し始めるだけで、緊張した空気が満ち溢れる。だからこそ、ジュリーのいたずらには思わずイスから落ちそうになるほど驚いた。同じ手を二度使ったのには閉口したが。その後も、異変にナーバスになるデニスと信じようとしないジュリーの葛藤、子供部屋にいてもケイティとクリスティの「それ」への温度差の違いなど、恐怖の主体に対してもそれぞれ感じ方が違い、特にデニスが次第に孤独に苛まれていく過程に共感を覚える。


◆以下 結末に触れています◆


やがてジュリーの実家に避難した一家は、そこでも「それ」の魔の手に絡め取られていく。ジュリーや子供たちがいつのまにか「あちら側」に行ってしまい、家の周りも得体のしれない人々に囲まれている。それでもデニスはカメラを手放さない。あくまで超常現象を撮影する立場を貫こうとしたデニスが当事者になってしまう瞬間は、感情を交えず冷徹だった映像がデニスの絶望に塗りつぶされているようだった。それは同時に「ドキュメンタリー」の体裁を捨てたことを意味するのだが。。。