こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

第7鉱区

otello2011-11-11

第7鉱区


ポイント ★★
DATE 11/9/29
THEATER TE
監督 キム・ジフン
出演 ハ・ジウォン/アン・ソンギ/オ・ジホ/イ・ハンウィ/パク・チョルミン
ナンバー 233
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


逃げ場のない施設で作業員たちが謎の怪物に次々と襲われる。外部との通信は途絶え、協力し合わなければならないはずの仲間に秘密を隠している者がいる。未知の生物からの攻撃とクルーの間に芽生えた疑心暗鬼、物語は2つの恐怖と戦う人々のサバイバルを通じて、勇気や責任感といったリーダーの資質を問うていく。同僚を救うために命の危険を顧みない者、脅えるばかりで足手まといになる者、自分だけは助かろうとする身勝手な者、極限状態に追い詰められた人間が次第に本性を露わにしていく様子がスリリングだ。


チェジュ島沖の海上プラントの開発リーダー・ヘジョンは会社の撤退命令に反対しているが、ベテラン技術者・ジョンマンの助力で試掘を続けられることになる。ある日、この海域に生息する深海生物のサンプルが水槽から逃げ、3カ月後に見つかった時には巨大化していた。


ホタルイカのような可愛らしい発光生物が、長い牙が生えた口と鞭のように伸びる舌を持つヌメヌメとした怪物にいつのまにか変身している。グロテスクな外見と敏捷な動き、人間を追いかけ、何度も食指を伸ばす執念はある種の知性すら感じさせる一方で、正体が燃料になる生命体という以外は由来は明かされない。また、5センチほどの幼生がどのよう成長・変体していくかも描かれないので、怪物がいきなり3メートル近い巨体で姿を現すのはいかにも唐突だ。そのあたり「エイリアン」と差別化しようとしているが、ただスケールが小さくなっただけの感はまぬかれない。せっかく“純韓国産CG”を売り文句にしているのだから、もっと大胆な作り込みをして「ハリウッド越え」を目指すべきだろう。


◆以下 結末に触れています◆


やがて、1人また1人とクルーは怪物の餌食になり、ヘジョンだけが生き残る。そこで彼女の負けず嫌いな性格とバイク好き、掘削機といった伏線が生かされ、怪物をなんとか倒そうと苦心する。その過程でも、体液が燃える以外にも怪物の弱点を探るとか、クルーの自己犠牲を美化するとかの工夫がなく、今一つ盛り上がりに欠ける。一つでもいい、アッと驚かせるようなオリジナリティあふれるアイデアが欲しかった。