こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロンドン・ブルバード

otello2011-11-29

ロンドン・ブルバード LONDON BOULEVARD

ポイント ★★*
監督 ウィリアム・モナハン
出演 コリン・ファレル/キーラ・ナイトレイ/レイ・ウィンストン
ナンバー 250
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


きっぱりと足を洗うつもりだったのに、狭い人間関係ゆえしがらみにとらわれる。いや、むしろ正義感が強いために、意志の固さが彼自身を追いこんでいく。映画はそんな元服役囚がなかなかまっとうな暮らしができずもがく姿を描く。やっと裏社会とは無縁のコネで得た仕事でさえ、昔の仲間が悪事に利用しようとする。一度踏み入れたら二度とカタギには戻れない現実に押しつぶされそうになりながらも運命と決着をつける道を選ぶ男を、コリン・ファレルが抑制した表情で演じる。


3年の刑期を終えたミッチェルは旧友に住居をあてがわれ、借金取りを手伝わされる一方で、若くして引退した女優・シャーロットのボディガード兼雑用係の職を得る。ある日、取り立て先で4人の黒人相手に1人で立ちまわったことから裏社会のボス・ギャントに気にいられる。


四六時中パパラッチに監視され神経質になっているシャーロットにとって、せっかく刑務所を出ても自由の身になりきれないミッチェルは唯一心を許せる相手だったのだろう。頼れる者がいないセレブの孤独が、単身ギャントの組織に立ち向かわねばならない根なし草と通じ合う。だが、カメラは決して彼らの内面に切りこまず、彼らもまたセックスで慰め合ってもお互いの事情に深く立ち入ろうとはしない。そのあたり、登場人物の喜怒哀楽に踏み込まないスタイルは、映像をよりクールなものにしている半面、感情移入しにくくなっている。ミッチェルの焦燥や憤怒は理解できても、その奥の苦悩までは伝わってこなかった。


◆以下 結末に触れています◆


ギャントの手下になるのを固辞したミッチェルは一転して命を狙われる。ギャントはミッチェルの周辺の人々を殺して制裁の意味を持たせるが、それが逆にミッチェルの怒りに油を注ぐ。殺す前に芝居がかった思い出話をするなどたっぷりと恐怖を味あわせるギャントと、タメを作らず止めを刺すミッチェル。この2人の暴力への対照的な接し方が、組織の上に立つ者と組織に属さない者の生き方を象徴していた。



↓公式サイト↓