こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

永遠の僕たち

otello2011-12-27

永遠の僕たち RESTLESS

ポイント ★★★
監督 ガス・ヴァン・サント
出演 ヘンリー・ホッパー/ミア・ワシコウスカ/加瀬亮
ナンバー 304
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


喪失の悲しみが充満する葬儀、清明な空気が漂う墓地、清潔だが冷たい病院、戦争の犠牲になった元日本兵。交通事故で両親を同時に失いひとり死の淵から戻ってきた少年の日常には常に濃厚な死の影が付きまとう。彼は決して恐れているわけではなく、もはや生死の境など無意味であるかのような諦観の中で、死を身近に感じることで己が生きているのを確認している。映画は、臨死体験で幽霊と会話できるようになった少年と余命幾許もない少女の交流を通じ、人が生きる理由を問い命の輝きを描く。肉体を失ってはその思いを伝えられない、そんな、死んでしまった者の無念と生き残ってしまった後悔が胸を締め付ける。


他人の葬儀に無断で参列するイーノックは、ある告別式でアニーという少女と出会う。イーノックの孤独な心は不治の病が進行中のアニーに惹かれ、ふたりはぎこちない交際を始めていく。


イーノックは特攻隊員だったヒロシの幽霊だけが話相手なのだが、生まれた時代も場所も違うヒロシとはコミュニケーションが取れるのに、いちばん愛していた両親の魂はいつまでたっても訪ねてきてくれない矛盾にいらだちを覚えている。一方アニーは確実に迫りくる運命を淡々と受け止め、ただ自分がこの世に存在した事実をイーノックの記憶に焼きつけようとする。死を見送る者と見送られる者、死の先は永遠の無と考える者と生の延長線と考える者。死はそこらじゅうにありふれていている、しかし当事者にとっては1回きりの経験。だからこそ意識のあるうちに気持ちを届けなければならない必要性を、切ないまでの澄み渡った映像が饒舌に訴える。


◆以下 結末に触れています◆


たくさんのキスと柔らかな肌のぬくもり、アニーと過ごした時間はイーノックの中で決して色褪せない。確かに両親の死は耐え難いショックだったに違いない、だがイーノックはそれを口実に現実から逃げていただけ。彼女の遺志を反映させた葬儀は、イーノックが再び人生に立ち向かう勇気を取り戻した証なのだ。


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